10.蛆* ページ11
風がパタリと止んだ。
だが、森はいっそう騒がしさを増す。
虫の羽音･･･
しかし、こんなに大きな羽音がこの時期に聞こえるものなのか？
その羽音の原因はすぐに分かった。
木の陰で黒い塊が蠢いているのだ。
その傍らには、糸くずのような蛆が大量に発生している。
そして、辺りは異様な臭いに包まれていた。
「な、なんだよこれ･･･」
猫は平然と毛づくろいをしている。
「逃げよう･･･！逃げなきゃ･･･」
急いで猫を抱き、全速力で逃げ出した。
･･･どれだけ走っただろうか。
ひたすらに道なき道を走ったが、元の鳥居の場所へ戻っていた。
「あれ･･･」
あんな適当に走ったのに元の場所へ帰れるものか？
自分を恐ろしく思う…
しかし、そんなことを考えている暇はないので川へと向かい、自転車で山道を駆けていった。
自転車を家に置き、すぐさま玄関を開ける。
「正輝ー？そんな乱暴に扉を開け……」
俺の青ざめた顔を見て、母は驚いていた。
「…どうしたの？いつもより帰ってくるのが遅かったから心配したのよ」
腕時計を確認する。
針は9時35分を指していた。
「母さん…俺はとんでもないものを見てしまったのかもしれない」
「な、なに？まさか、死体とか?」
「そのまさかだよ…」
「えっ」
その言葉に母の顔色が変わる。
「と、とりあえず中に入りましょ。さばとらもゲージから出たがってるし」
リビングに入ると弟がいたが、様子を察し、二階へ行ってしまった。
猫を部屋に放してあげると、床にゴロゴロし始めた。
「本当なの？死体を見たって」
「何の死体かは分からないけどね…」
そうだ、あれは野生の動物かもしれない。
人間じゃないさ…きっと…
「一応警察に言った方が良いかもね」
「うーん、そうかな…」
ふと、足元に痒みが襲う。
普段なら耐えられるのだが、今回のは掻かずにはいられなかった。
「ちょっと…それ…!」
掻きむしったところを見ると、蛆が何匹か纏わりついていた。
「うわぁああああああっ!?」
近くにあった新聞紙で叩きのめす。
生きてる人間には寄り付かないものだろ…!
「はぁ…ビックリした…」
か弱く動いている蛆を新聞紙にくるみ、外で燃やした。
聞こえるはずもない叫び声が、何故か耳の中で響いた気がした。
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茄子2(プロフ) - 奏葉@TRPG廃さん» 応援ありがとうございます。是非、これからもお読みになっていただけると嬉しいです。 (2016年9月7日 16時) (
レス) id: 227a07cc88 (このIDを非表示/違反報告)
奏葉@TRPG廃(プロフ) - せ、世界観や文章、登場人物のぐじゃぐじゃな心情とか…もう、凄い素敵でした…！本屋さんにある小説くらい迫力があって一気に読み進めてしまいました。更新、是非頑張って下さい！陰ながら応援させて頂きます。 (2016年9月6日 17時) (レス) id: 3ff4ffe414 (このIDを非表示/違反報告)
茄子2(プロフ) - 霧憑 幻さん» ご指摘ありがとうございます。修正しました。 (2016年5月5日 22時) (レス) id: 45bd06207d (このIDを非表示/違反報告)
霧憑 幻(プロフ) - ページ2のほうで、「彼とうまくいってないのかな」でしょうか？「ないなかな」になってます (2016年5月5日 21時) (レス) id: a919ed2021 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：茄子2 | 作成日時：2016年4月22日 20時
