【MHA】片割れたオレンジ (ページ9)

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Aは双子の兄、俺の片割れ。

何処にいても、何をしていても俺の隣にいた。

俺はAが大好きだったし、Aも俺のことが大好きだ。

できることならずっと独り占めしていたい、Aは俺のモンだ。

よく似た顔も、綺麗な髪も、透き通るような瞳も、元気な声も、細い指も、柔らかい肌も、心も、骨の髄の更にその先も。
笑顔も困り顔も泣き顔も、過去と未来までも、全部全部俺のだ。

…………そうは思っていても、
いつかは大人になったAが誰かと結婚して、俺のモンではなくなってしまう日が来てしまうと分かっている、現実直視の俺もどこかにいる。

独占欲や私欲の塊と、凍てつくような冷静さが鬩ぎ合う度に頭が痛くなる。

考えられない、考えたくない未来の話……
思えば思うほど、胸が日に日に苦しくなっていくのを感じた。

俺の隣にはいつまでもAがいて欲しいし、Aの隣に俺以外の誰かがいたらたまったもんじゃねぇ。

Aに対しての独占欲が普通じゃないことはとっくに知っていた。

人はそれを｢恋｣なんて言うかもしれないが、これを｢恋｣と呼ぶにはもう遅すぎる。
自覚した時にはもう既にそんな尊いものとはかけ離れてしまっていた。

それもその筈だ、でなきゃそんな綺麗なものでこんな醜い欲に塗れるわけがないからな。

恋も愛も通り越した、その成れの果ては何と呼べばいいのだろう。