49.哀れな哀れなお姫様 ページ2
「────落ち着いたか？」
「…う、ん…」
ひとしきり泣いて、それももう枯れた頃。
力が抜けて真昼にもたれ掛かると優しく頭を撫でられる。
だけど平穏な時間はそう長くは続かなかった。
「…邪魔するぞー…A落ち着いたか？」
「────っ‼」
「大分落ち着いたよな…っ？A？」
扉を開けて入ってきたクロの声を聞いた瞬間、体が縛られたように動かなくなった。
びくっと痙攣した私に真昼が怪訝そうな表情に変わる。
「…っはあ、はあ…」
呼吸が徐々に乱れ始め、肩が小刻みに上下していた。
「っ…？A、どした？聞こえてるか？」
「…はあ、はあ、はあ…」
真昼の声が聞こえなくなり、心配した真昼が私の状態を起こす。
その時ついに見てしまった。
────昨日吸血された時に見たのと同じ、クロの…
「『…A？』」
「っ〜〜〜〜〜〜!!」
思わず腕を掻き抱くと、全身が震え出した。
────あの日と同じ。
あの日って…なに…？
────あの日と同じ言葉を。
あの日って…なにっ…
────彼は嘘をついた。
クロは嘘なんてつかない‼
────彼は騙した。
そんなことする人じゃ…
────じゃあ身に覚えのない夢を見るのは何故？
そ、れは…
────会ったこともない人たちの記憶を見たのは何故？
そ、れは。
────吸血された時に見たものは、全部全部本当だよ？
…ち、がう。
────じゃあ楽しそうにしていた少女は誰？
あ、れは…
────あなたが男性恐怖症なのは何故？
それ、は。
────あなたの小さい頃の記憶がないのは何故？
っ…!?
────あなたは、だれ？
わ、たし、は。
────吸血鬼という鳥籠に捕らわれた、哀れな哀れなお姫様だったのでした。
「っ！いやぁぁぁぁぁぁぁあっ‼」
頭が真っ白になった。
全てが白い光に呑み込まれて、見えなくなっていく。
「っは、はっ…」
それはとても大切な何か。
「Aっ‼しっかりしろ!!Aっ…‼」
とても尊い何か。
「おいA目覚ませ…‼くそっ、」
とても儚い、《何か》だった。
「…っはぁ、は…」
「Aっ！大丈夫か…？」
辺りをつんとした匂いが漂う。
体が痛み、重い。
何故か呼吸が乱れ。
肩を掴まれている。
顔を上げると。
「────っ！だ…れ？」
────体が、震えていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 163人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「逆ハー」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
重岡ゆう毅(プロフ) - 続きが気になります、！！大変だとは思いますが、更新待ってます！！ (2018年11月19日 2時) (
レス) id: 18e1e6c35b (このIDを非表示/違反報告)
ふうか(プロフ) - すごく内容に引き込まれます…！これからも応援しています！頑張ってください！ (2018年6月5日 2時) (レス) id: 8efdf1c9c8 (このIDを非表示/違反報告)
小雪 - 夢主ちゃんの過去…もう予想がついてきました！更新頑張ってください！応援しています！夢主ちゃん羨ましい！ (2018年4月4日 21時) (レス) id: 3b39f94354 (このIDを非表示/違反報告)
いお(プロフ) - 博多の塩さん» コメント並びにお気遣いありがとうございます…夢主ちゃんの過去にもこれからどんどん触れていくので、読んでいただけたら嬉しいです！よろしくお願いします！ (2018年4月4日 20時) (レス) id: be0310918f (このIDを非表示/違反報告)
いお(プロフ) - 小雪さん» コメントありがとうございます！ご感想嬉しいです…更新頑張りますので、お待ちいただけたら幸いです！これからも読んでいただけたら嬉しいです、よろしくお願いします！ (2018年4月4日 20時) (レス) id: be0310918f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：いおり | 作成日時：2018年4月3日 21時
