第３６話 ページ38
『……』
Aは、冷ややかな眼差しで地面を見下ろす。
…そこには、真っ赤な水溜りができていた。
そして、あたりに散らばる肉片。これらは全て、元は人間だったモノ。
大蛇丸が差し向けた刺客以外にも、危険な芽は早々に摘んでしまおう、と考えた各国の忍だったモノも含まれていた。
…その数およそ三十。
その三十の忍は、わずか二分足らずでAの爪の餌食となったのだった。
『…変わらないな』
Aはそう呟く。
変わらない。どいつもこいつも。
ーーかつて俺を殺そうとした、元の世界の人間と。
Aは両手を見つめる。足元を汚す水溜りの色と同じ、真っ赤な血が指先を染めていた。
別に人間を殺す事に、なんの後悔もない。相手は自分を殺そうとしたのだから、俺の狂気を浴びるのは、至極当然の事だ。
だが、殺したい訳ではない。殺人なんて、やってはいけないという事くらい、理解している。
『…相手が殺そうとしてこなければ、俺も、この手を血で穢さずに済むのにな…』
ギュッ、と拳を握りしめる。
けれど、仕方ない。身体の内に宿る、狂気と言う名の獣が起こされる限り、俺は何度でも爪を振るうだろう。
『……俺はもう、命を狙われる運命なんだろうな』
そう言って、深い深い溜息を吐くと、Aは〈テレポート〉でその場から姿を消した。
Aが何処へ向かったのか、知る者は一人としていなかった。
・
大蛇丸と火影の戦い。そしてナルトと我愛羅の戦い。
その二つの大きな争いは、Aの知らぬ所で決着がつく。
ーー死闘の末、火影は死に、ナルトと我愛羅は相打ちで幕を閉じたのだった。
・
〈テレポート〉で姿をくらませたAが里に帰ってきたのは、およそ四時間後であった。
『……随分と静かだな』
破壊された街。所々に血痕が見られた。
どうやら、今回の戦いの被害は甚大だったようだ。
『…俺の家が無事でよかった』
先ほど見に行った、無傷の我が家を思い出す。
ほとんどの家は瓦礫と化していたのに、何故かAの家だけは何事もなかったかのように建っていたのだ。
ーーただ、家の周りは水浸しになっていたが。
『…後でオーダイルに礼を言わないとな』
きっと、俺の代わりに家を守ってくれたのだから。
そう思って、小さな箱を持ちながら淡々と歩いていると、Aはある事に気付いた。
(黒服が、多いな…)
ぱらぱらと街を歩く人々は、皆一様に黒色の服を着ていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 242人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ポケットモンスター」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
海歌 - 今度、主人公の妹も入れた小説作ってもいいですか？ (2017年2月6日 15時) (
レス) id: 9e7081a8f5 (このIDを非表示/違反報告)
名無しのポケもん好き - びっくりするくらい面白い (2016年12月23日 21時) (レス) id: d81526141d (このIDを非表示/違反報告)
ナイロン - 続き待ってました!!これからも頑張ってください!! (2016年7月4日 21時) (レス) id: 6f2be02f91 (このIDを非表示/違反報告)
キヌカ - この小説大好きです！【眠れる獅子】が気になります。頑張って下さい！ (2016年6月21日 9時) (レス) id: 0257f3d498 (このIDを非表示/違反報告)
ナイロン - めっちゃくちゃ面白いです!!続き期待してます!! (2016年6月18日 20時) (レス) id: 6f2be02f91 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：白蛇 | 作成日時：2016年3月12日 20時
