第32話 ページ34
ドスの目の前から、Aが消えた。
「なッ!?」
狼狽えるドス。だがすぐに背後から、声が聞こえた。
『…こっちだ』
「ッ!?」
ドスが後ろを振り返るより速く、Aは姿を消している間に溜めた腕を大きく振りかぶりーー
『〈シャドーダイブ〉』
「ぐああッ!」
そのまま、殴った。
あまりの威力に地面に叩きつけられるドス。だが、まだ攻撃は終わらない。
Aは地面に蹲るドスの襟を掴むと、上へと放る。そしてそのまま、
『〈スカイアッパー〉』
「ガッ!!」
顎目掛けて拳を叩きつけた。
骨が砕ける鈍い音を響かせながらドスは宙を舞う。
『…トドメだ』
Aは、ぐっ…、と足に力を入れ、高く飛び上がる。
そしてドスに渾身の〈とびひざげり〉をぶち当てようと思ったのだが…。
『……あ』
手に血が付いているのが目に入った。
どうやらドスの攻撃で、耳から血が流れたらしい。すぐに治したから気付かなかった。押さえた時に付いたのか。
まあ、それ自体は特に問題はない。問題なのは、"血が流れた"事。
『…失敗したな』
そう言ってAは苦笑した。
・
「あいつどうしたんだ…?」
「今、攻撃のチャンスだっただろうに」
突如攻撃を止めたAに観客がざわめく。
彼は何もしないまま、地面に降り立ってしまった。
『…この気配だと、…あいつらか』
そんな観客を気にも留めずにぼそりと零した言葉は、誰にも聞こえていなかった。
「ぐ…う…ッ」
『…なあ、お前運が悪いな』
Aは痛みで呻くドスを見下ろして、言った。
『死が、決まったぞ』
《グルルルルル……》
その言葉と同時に、唸り声が響き渡った。
聞いた者の身体を凍りつかせる、地を這うような低い声。
『やっぱり、お前たちが来たか。…グラエナ、ニャオニクス』
Aがそう言うと、Aの影が立体化し、どんどん形を変えてーー
《ガアアッ!!》
《フーッ!》
狼のような獣と、それに乗った獣へと変化した。
「…何じゃ、あの口寄せは…!」
その様子を見た火影は戦慄する。あんな方法での口寄せなど、長年生きてきた中でも見た事なかった。
『…俺の護衛の中でも最も過激派な二匹だ』
グルグルと唸るグラエナと、毛を逆立てドスを睨んでいるニャオニクス。
ああ駄目だ。完全にキレている。
…本当に対戦相手が哀れでならない。
『最初に俺を攻撃したのは、間違いだったな』
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海歌 - 今度、主人公の妹も入れた小説作ってもいいですか? (2017年2月6日 15時) (レス) id: 9e7081a8f5 (このIDを非表示/違反報告)
名無しのポケもん好き - びっくりするくらい面白い (2016年12月23日 21時) (レス) id: d81526141d (このIDを非表示/違反報告)
ナイロン - 続き待ってました!!これからも頑張ってください!! (2016年7月4日 21時) (レス) id: 6f2be02f91 (このIDを非表示/違反報告)
キヌカ - この小説大好きです!【眠れる獅子】が気になります。頑張って下さい! (2016年6月21日 9時) (レス) id: 0257f3d498 (このIDを非表示/違反報告)
ナイロン - めっちゃくちゃ面白いです!!続き期待してます!! (2016年6月18日 20時) (レス) id: 6f2be02f91 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:白蛇 | 作成日時:2016年3月12日 20時