第２３話 ページ25
「アﾞ、アﾞァァ…ッ！」
喰い破られた所から血が噴き出した。
あまりの痛みで、かすれた声で泣き叫ぶ。
『お前らの目はどうやら節穴のようだな。…なぁ、使い物にならないただの犬に喰われた愚かな忍さん？』
Aはそう言って、落ちた男の腕をグシャリと踏み潰す。生々しい音が、男たちを更に恐怖の底へと落とした。
「わ、悪かった！もう襲おうなんてしない！」
「だから、だから！」
『見逃してくれ…と？』
ガタガタと震え、命乞いをする二人。そんな男たちをAは冷やかな目で見下ろした。
『…お前らは、俺を殺そうとしたのに？』
「「「！！」」」
ああ、駄目だ。三人は思った。
だってあまりにも、
『弱者であるにもかかわらず、俺の命を狙ったんだ』
あまりにもこの男の瞳は、
『…それ相応の罰は、受けて当然だろう？』
狂気を、含み過ぎている。
『死ね』
その言葉と同時に、強風が吹き荒れる。
木はバサバサと揺れ、木の葉が舞い上がる。
そして、その木の葉がピタリと止まると、
一斉に、三人に襲いかかった。
・
森の中に、二人の試験官がしゃがみこんでいる。彼らの前にあったのは…死体。
「…こりゃ酷い」
試験官は、頭を掻いてそう言った。
「この仏さん、一体誰だったのかさえわかんねえな」
口元を抑えながら、もう一人の試験官が死体から目をそらす。
「どういう術をしたら、こんな人が細切れになるんだよ…ったく」
彼らのいる地面は赤黒く染まり、そこにはかつて人間だったモノの肉片が散らばっていた。
まるで、鋭い刃物に滅多斬りされたかのように。
…ただ、その醜い死体の周りには、
「今回の受験者、えげつない奴がいるなぁ…」
木の葉が、大量に落ちていた。
・
『…くそ…ッ、嫌な事を思い出した』
《くぅん…》
白の巻物を口に咥え、走るウインディの背中に顔を埋めるA。
『……』
蘇る、絶望。
何度、痛めつけられただろう。何度、殺されかけただろう。
俺はただ、人よりも力が強かっただけなのに。
『これだから、人間は嫌なんだ』
"自分たちと違う"
それだけの理由で蔑み、存在を消そうとする。
だが俺は死にたくない。それに、家族と生きると約束したから、
『俺の命を狙う奴は、ただでは済まさない』
ーーたとえそれが、他の命を奪う事だとしても。
『…さっさとこのサバイバルを終えて、一寝入りしよう』
Aはウインディの温もりの中で、そう決意した。
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海歌 - 今度、主人公の妹も入れた小説作ってもいいですか？ (2017年2月6日 15時) (
レス) id: 9e7081a8f5 (このIDを非表示/違反報告)
名無しのポケもん好き - びっくりするくらい面白い (2016年12月23日 21時) (レス) id: d81526141d (このIDを非表示/違反報告)
ナイロン - 続き待ってました!!これからも頑張ってください!! (2016年7月4日 21時) (レス) id: 6f2be02f91 (このIDを非表示/違反報告)
キヌカ - この小説大好きです！【眠れる獅子】が気になります。頑張って下さい！ (2016年6月21日 9時) (レス) id: 0257f3d498 (このIDを非表示/違反報告)
ナイロン - めっちゃくちゃ面白いです!!続き期待してます!! (2016年6月18日 20時) (レス) id: 6f2be02f91 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：白蛇 | 作成日時：2016年3月12日 20時
