第１９話 ページ21
『……』
じっ、と獲物である男の背中を見つめるA。
「102番失格」
「23番失格」
「43、27番失格」
次々と脱落していく受験者たち。
嫌だ！と悲痛な声を上げる中、Aはただひたすら隙を伺っていた。
「……っ」
すると男は肩がこったのか、一度ペンを止め、ぐ…っ、と背伸びをする。
隙が、出来た。
(…今だ)
『…〈トリック〉』
パチン、と指を鳴らす。
それは、集中しないと聞こえないくらい小さな音。
だが、その瞬間。
「…！？」
"勉"と書かれた服を着た男性、Aの獲物は、目の前の出来事に目を見開いた。
(……？)
突然慌て出した仕掛け人の中忍に、イビキは首を傾げた。…何かあったか？
そう、Aの動きを見ていたイビキでさえも、気付かなかった。
ーー中忍とAの答案用紙が、すり替えられた事に。
(う、嘘だろ…！)
(…！？、どういう事だ…！)
その時から、次々と手が止まる受験者が増える。
それらの受験者は全員、その中忍を使って問題を解いていた者。
(…あれだけ書かれていた答案用紙が、白紙になりやがった…)
サスケは、中忍と同じように目を見開く。
彼も、その中忍を使って問題を解いていた一人だったからだ。
(…何だかよくわからないが、解いた後でよかった…！)
運良く、彼に被害はなかったようだが。
・
(どうした…、動揺し始める者が増えた…)
それと同時刻、イビキは受験者を見渡す。
原因は誰かの術か、それとも試験の不備か。
『……』
そう考えていると、ふと、Aと目が合った。
…彼が、勝ち誇ったような笑みを向けた。
「……っ！」
イビキは部屋を見回るフリをして、Aの席へと近付く。その時、Aはずっと置いていたペンを持ち、イビキが来るのを待っていた。
そして、彼がAの答案用紙が見えるまで近付いたのを見届けると、
(っ！、こいつ…！！)
答案用紙の名前欄を消し、そこに何かを書いた。
消されたのは、中忍の名前。
ーーそこにAの名前が書かれたのだ。
(いつの間に…！)
イビキは呆然とした。
ずっと、監視していたのだ。持ち点１点という失敗が許されない状況を、自分から名乗り出る事が出来る、その自信の根拠はなんだ、と。
…その結果がこれだ。
試験官を、俺をも気付かせずに欺いたその技術。
賞賛に、値する。
「……負けたよ」
『……』
イビキは目を伏せて、Aにそう言った。
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海歌 - 今度、主人公の妹も入れた小説作ってもいいですか？ (2017年2月6日 15時) (
レス) id: 9e7081a8f5 (このIDを非表示/違反報告)
名無しのポケもん好き - びっくりするくらい面白い (2016年12月23日 21時) (レス) id: d81526141d (このIDを非表示/違反報告)
ナイロン - 続き待ってました!!これからも頑張ってください!! (2016年7月4日 21時) (レス) id: 6f2be02f91 (このIDを非表示/違反報告)
キヌカ - この小説大好きです！【眠れる獅子】が気になります。頑張って下さい！ (2016年6月21日 9時) (レス) id: 0257f3d498 (このIDを非表示/違反報告)
ナイロン - めっちゃくちゃ面白いです!!続き期待してます!! (2016年6月18日 20時) (レス) id: 6f2be02f91 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：白蛇 | 作成日時：2016年3月12日 20時
