第１１話 ページ13
『さて、両腕が使えなくなった訳だが…どうする』
《グルルル…》
「くそ…ッ！」
冷ややかな目で再不斬を見下ろすAの隣で、オーダイルが唸り声をあげた。
それを見て、再不斬は舌打ちをする。
("どうする"だと？…そんな選択肢、俺にはないとわかってるだろうに)
ちらりと、青色の鰐を見る。腕を砕いた、忌々しい鰐だ。
(…完全に、俺殺すつもりでいやがる)
そんな鰐の瞳に浮かぶのは、確かな殺気。助けるつもりなど毛頭ない、と言わんばかりのソレは、
「……殺すなら、殺せ」
再不斬から、闘争心を失わせた。
『…だとよ、オーダイル』
《グオオオォォッ！！》
空へと吠える鰐。
空気を震わせ、大地を震わせ、身体を震わせるその遠吠えは、A以外の、全ての生き物の動きを恐怖で止めた。
オーダイルの腕がグッ…、と引かれる。
そして恐ろしい腕力から放たれるその〈ばかぢから〉は、無抵抗の再不斬の心臓を…
「ざ…ざぶざさ……」
ーー貫きは、しなかった。
あたりに血が飛び散る。その血は再不斬のものではない。貫かれたのは、再不斬の心臓ではない。
ただ一人、再不斬を慕い、彼に従っていた人物である、
……白の。
『……そうか、お前はその道を選ぶのか』
ぼそりと、Aは白を見て呟く。オーダイルは黙って腕を白の胸から抜いた。ドサ…、白は地面に倒れる。
白は、既に事切れていた。
『馬鹿な奴だ。お前が守ったところで、こいつは死ぬのにな』
Aはそう言いながらしゃがみこみ、白の顔へと手を伸ばす。
『再不斬はオーダイルを怒らせた。だからこそ、こいつの死ぬ運命は変わらない。お前がやった事は、無駄だった』
そして、その手は白の目を覆い、
『…だが、最期の表情がソレならば、お前の行動は、正解だったのかもしれないな』
そっと、目を閉ざした。
『……』
そして、Aは立ち上がる。するとAのそばにはナルトがいた。
「…何が、正解だよ」
『……』
彼の声は、震えていた。その瞳から涙を零して、Aに向かって叫んだ。
「自分の夢も見れねーで、道具として死ぬ事のどこが！正解なんだよッ！」
『黙れ』
低い声が、響いた。
『こいつが、自分で選んで行動した事だ。…誰にも否定は出来ない。お前にも、俺にもな』
「……クク…、随分と一丁前の事を言いやがる」
『……』
再不斬が、クスリと笑った。
彼の視線の先には、白の姿。
彼は、笑って死んでいた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 242人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ポケットモンスター」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
海歌 - 今度、主人公の妹も入れた小説作ってもいいですか？ (2017年2月6日 15時) (
レス) id: 9e7081a8f5 (このIDを非表示/違反報告)
名無しのポケもん好き - びっくりするくらい面白い (2016年12月23日 21時) (レス) id: d81526141d (このIDを非表示/違反報告)
ナイロン - 続き待ってました!!これからも頑張ってください!! (2016年7月4日 21時) (レス) id: 6f2be02f91 (このIDを非表示/違反報告)
キヌカ - この小説大好きです！【眠れる獅子】が気になります。頑張って下さい！ (2016年6月21日 9時) (レス) id: 0257f3d498 (このIDを非表示/違反報告)
ナイロン - めっちゃくちゃ面白いです!!続き期待してます!! (2016年6月18日 20時) (レス) id: 6f2be02f91 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：白蛇 | 作成日時：2016年3月12日 20時
