後輩以上、恋人未満【名前変換オリジナル】

伝えたい言葉。 ページ13

私は呼吸をするのも忘れて新たな単語を探してゆく。



とにかく、必死で。

もう、無我夢中で。

Thank you……ありがとう？ 違う。

Happy……嬉しい？ これでもない。

辞書のページを次々とめくり、返したい言葉を探していく。

だけど見つかりそうにない。

………………そっか。

ああ、そうなんだ。

この中に私の伝えたい言葉はない。

こんな決められた単語の中に私の伝えたい言葉はない。

こんなやり方じゃ多分、絶対、うまく伝えられない。

辞書を閉じた私は、スッと立ち上がる。

衝動的だった。

こうしなきゃならない。強くそう思ったから。

後からじゃ意味がない。今、すぐじゃなきゃ意味がない。

勢いで教室を出て廊下の先を見渡す。

洸さんの姿はもうどこにもない。

再び教室に戻り、今度は窓に向かって全速力で走る。

三階の教室。

深く身を乗り出した先に見つけた。

昇降口から出てくる……大好きなあの人の姿。

『洸さん！』

必死な呼びかけが届いたのか洸さんは足を止める。

こっちを振り返らないのは、表情を見られたくないからかもしれない。

背中が照れているように見えるのは、気のせいなんかじゃない……よね？

＿＿＿ありがとう。見たよ。

頭の中では言えるのに。

辞書の答え、ちゃんと見たよ＿＿＿

不思議だね。

二人の時間だけが止まっているように感じるよ。

これから二人はどうなっていくだろう。

分からない。

分からないからこそ、新しい時間を作っていける。

息を吸い上げ、私は精一杯、ありったけの声で叫ぶ。

うまくいく。→←小さな文字。

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