41 〜太宰治side〜 ページ42
「Aー?お腹空いた〜」
探偵社の仕事から逃げてきた先、訪れるのはいつもこの場所だ。口では厳しいことを言いながら、なんだかんだで匿ってくれるAの元。
「働かざる者食うべからず、よ。太宰にあげるご飯はありません」
「え〜、じゃあそのご飯は誰の?」
「中也さんと芥川くんの分」
「私にも作ってよ〜!」
駄々っ子攻撃は華麗にスルーされたので、仕方なく視線を窓の外に向ける。
「……秋だねぇ」
色とりどりの葉っぱが揺れて、舞って、落ちる。道に散りばめられた赤や黄色は、幻想的な秋の風景を美しく表現していた。
「ねぇ」
「んー?」
生返事にムッとして大声で名前を呼ぶ。
「Aー!」
「なに!」
勢いよく振り返ると、ポニーテールがぱさりと音を立てる。眉を吊り上げた不機嫌な顔。真っ赤なルージュが引かれた唇が真一文字に結ばれている。せっかく綺麗にメイクが施されているのに、もったいない。
「眉間に皺。どうしたの?」
Aは徐に深く息を吸って、吐いた。そして身体中の力が抜けると、だらしなく表情をふにゃりと緩ませる。
「ど、どうしたの?」
戸惑いながらもう一度問う。両手で顔を覆いながら、Aは喜々とした声を上げる。
「今日ね!芥川くんがね!」
「うん?」
「朝ご飯、おかわりしてくれたの〜!!」
喜びに打ち震えるA。これ以上ないくらいに幸せそうだ。
「へぇ……あの芥川くんが」
「それで、さっきから表情が緩まないようにしてたんだけど、やっぱり無理……!嬉しい!」
頬を紅潮させる彼女は、たくさんの女性を口説いてきた私から見ても可愛らしく思えた。
「もう、そんな顔しなくても、太宰の分も作ってるよ。今日のレシピはねー」
「秋刀魚でしょ。それに、秋ナス」
「正解!」
秋の食材を使った料理が次々と机の上に並ぶ。すると、ベストタイミングで扉に付けられた鈴が鳴った。
「よう、A。……って、太宰も居やがる」
「中也さん!おかえりなさい」
「中也、まだ生きてたんだー」
「んだと!?手前、表出ろや!!」
「やだねー」
こちらの喧騒を呆れ顔で見てから、Aは芥川くんに向き直る。
「おかえり。芥川くん」
「只今戻りました」
「ふふ。さ、座って?」
Aに促され、三人横並びに座る。目の前には美味しそうなご飯。揃ってぱちん、と手を合わせる音。
「「「いただきます」」」
その一言が幸せを象った。
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さくら餅(プロフ) - 紅玉さん» 最後まで読んでいただき、ありがとうございました!無事完結させることができて心底ほっとしております。私は貴方様のコメントにギュンギュンしました!笑本当にありがとうございました!! (2021年2月7日 15時) (レス) id: 0223a8e0a3 (このIDを非表示/違反報告)
紅玉 - 完結おめでとうございます!!!!尊いのと可愛いので私はギュンギュンしまくってました!!!!(ギュンギュンとはキュンキュンの進化系です!!!!) (2021年2月7日 12時) (レス) id: 835185f078 (このIDを非表示/違反報告)
(=^・^=) - 人虎に会いたい…。 by芥川 (2020年12月1日 15時) (レス) id: b3d6820988 (このIDを非表示/違反報告)
(=^・^=) - 厳しいわ。 (2020年12月1日 14時) (レス) id: b3d6820988 (このIDを非表示/違反報告)
さくら餅(プロフ) - ☆天香☆さん» ありがとうございます!!すっごく嬉しいです!文ストはキャラクターひとりひとりが個性的で大好きなので、つい絡ませちゃいます笑コメントありがとうございました!! (2020年3月12日 21時) (レス) id: 0223a8e0a3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さくら餅 | 作成日時:2019年10月4日 16時