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服装に悩むなんて、いつぶりだろう。オシャレは元々好きだったけれど、私にとってのオシャレは、誰かの為にするものだった。
織田作が居なくなってしまってからオシャレに気を遣う機会があんまりなかった。だから、なんだか懐かしいし新鮮でもある。
「……あの、紅葉さん……」
エリス嬢に相談をしてから二日後。話はこんな所まで回っていたらしい。目の前にずらりと並ぶ着物に目がチカチカする。
煌びやかで華やかな着物がたくさん。紅葉さんはこの中から好きなものを選んで良いと言ってくれた。……けど。
「さ、流石に……こんな良い着物貰えませんよ……!」
服のブランドとかにも詳しい訳じゃないけど、目の前の物はどれも新品のように綺麗で、とても私が貰っていいものじゃないことだけは分かる。
謙遜とかじゃなく、本気でこれは身の丈に合わなすぎる。
「なんじゃ、気に入らんのか?」
「いえ、そういうわけではないのですが……」
「これなんか良いんじゃないかしら!」
「わーっ!!エリス嬢、そんな風に扱っちゃダメですよ!!」
エリス嬢が選んできた着物をばっと奪い、整える。こんな良い生地にシワなんかついたら大変だ……!
「……A、遠慮はいらん。どれが好きか、選ぶだけで良いぞ」
「えぇ……どれも綺麗で選べませんよ……」
「それは光栄じゃな」
びっくりするくらいに綺麗に上品に笑った紅葉さんに思わず見とれていた。はっと我に返って目を逸らす。
見た目の美しさも勿論なんだけど、細かい所作なんかが物凄く綺麗なんだよなぁ……。女の私でもドキドキする時があるし、男の人なんてすぐオトせるんだろう。
「紅葉さん、自分から告白したことってありますか?」
「なんじゃ?藪から棒に」
「その……ちょっと、気になって」
紅葉さんこそ、男の人なんて選り取りみどりのはずだけど、そういう浮いた噂はひとつも聞いたことがない。
「……そうじゃな」
しばらくして返事が返ってきた。目を伏せた紅葉さんは愛おしむように、寂しげに言葉を零していく。
「わっちにも居たぞ、恋焦がれた相手が。けれど……周りがそれを許さなかった」
「……気持ちを伝えることさえもできなかったんですか?」
「いや、想いは告げた。実際、わっちらは通じ合っておった。けれども……それでも、許されぬもの。叶わぬ恋じゃったな」
作られたものじゃない、切ない表情に胸が締め付けられた。
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さくら餅(プロフ) - 紅玉さん» 最後まで読んでいただき、ありがとうございました!無事完結させることができて心底ほっとしております。私は貴方様のコメントにギュンギュンしました!笑本当にありがとうございました!! (2021年2月7日 15時) (レス) id: 0223a8e0a3 (このIDを非表示/違反報告)
紅玉 - 完結おめでとうございます!!!!尊いのと可愛いので私はギュンギュンしまくってました!!!!(ギュンギュンとはキュンキュンの進化系です!!!!) (2021年2月7日 12時) (レス) id: 835185f078 (このIDを非表示/違反報告)
(=^・^=) - 人虎に会いたい…。 by芥川 (2020年12月1日 15時) (レス) id: b3d6820988 (このIDを非表示/違反報告)
(=^・^=) - 厳しいわ。 (2020年12月1日 14時) (レス) id: b3d6820988 (このIDを非表示/違反報告)
さくら餅(プロフ) - ☆天香☆さん» ありがとうございます!!すっごく嬉しいです!文ストはキャラクターひとりひとりが個性的で大好きなので、つい絡ませちゃいます笑コメントありがとうございました!! (2020年3月12日 21時) (レス) id: 0223a8e0a3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さくら餅 | 作成日時:2019年10月4日 16時