26 ページ27
好きという気持ちに気が付いても、それから何があるって訳でもなくただ日々は流れていく。
晴れる日、雨の日、曇りの日。
一日一日、景色が巡っていく様子を眺めながらこの気持ちをどうしたらいいのか常に考えている。
私たちはもう子供じゃない。学生のような淡く甘酸っぱい付き合いができる程幼くない。
だからこそ、難しい。
「A〜?」
背後から声をかけられて振り返る。びしょびしょに濡れた髪の毛から雫が滴り落ちている。……床が濡れちゃうってば。
「もう、ちゃんと拭いてから出てきてよ」
背伸びをして濡れた髪をわしゃわしゃと拭いてあげると、猫のように擦り寄ってきた。
こんなふらふら誰かと心中しそうな猫は要らないけど。
羨ましいくらいにふわふわした髪を拭き終え、ドライヤーを取りに向かう。
「こんなに簡単に男を家に上げてはいけないよ?仮にも女の子でしょう?」
「太宰は私を女の子って思ってないでしょうが」
「ふふ、どうかな?」
「意味深なこと言わないー。ほら、座って。ドライヤー」
女の子はこういう手のかかる可愛い所に、ギャップを感じるんだろうか。
私は太宰が腹黒なの知ってるからなんとも思わないけどな、なんて少し失礼なことを考える。
「……ほんと、ふわふわの髪」
神に愛された容姿って、こういうことなんだろう。
何となく、というか妬み九割で乱雑に頭を撫で回す。
女の子なんてよりどりみどりの癖に。私なんかに構う必要ない癖に。
でも、変なところで律儀な彼のことだ。きっと織田作のことも私のことも後悔して、今も私にこうして度々会いに来るのだろう。
「太宰。私はもう大丈夫よ?」
私の言葉に太宰は明らかに動揺を見せた。ピタリと動きが止まって数秒。太宰は肩を竦めて笑った。
「私がAに会いたいからこうしてるだけだよ」
「うっそだーあ。絶対なんか企んでるでしょ?」
咄嗟に出た言葉は、照れ隠しだった。頬が火照っていくのが分かった。
喧嘩ばっかりしてたけど……なるほど。こうやって関係性は変わっていくんだ。
それが嬉しくて、少し寂しくもある。
……ねぇ、織田作。
あなたが居ない日々は辛くて寂しいものだったけど、周りのみんなはこんなにも私を大切にしてくれる。
「幸せかも」
ふと呟いた言葉に太宰は目を丸くして振り向いて、それから少年のように無邪気に笑ってくれた。
69人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
さくら餅(プロフ) - 紅玉さん» 最後まで読んでいただき、ありがとうございました!無事完結させることができて心底ほっとしております。私は貴方様のコメントにギュンギュンしました!笑本当にありがとうございました!! (2021年2月7日 15時) (レス) id: 0223a8e0a3 (このIDを非表示/違反報告)
紅玉 - 完結おめでとうございます!!!!尊いのと可愛いので私はギュンギュンしまくってました!!!!(ギュンギュンとはキュンキュンの進化系です!!!!) (2021年2月7日 12時) (レス) id: 835185f078 (このIDを非表示/違反報告)
(=^・^=) - 人虎に会いたい…。 by芥川 (2020年12月1日 15時) (レス) id: b3d6820988 (このIDを非表示/違反報告)
(=^・^=) - 厳しいわ。 (2020年12月1日 14時) (レス) id: b3d6820988 (このIDを非表示/違反報告)
さくら餅(プロフ) - ☆天香☆さん» ありがとうございます!!すっごく嬉しいです!文ストはキャラクターひとりひとりが個性的で大好きなので、つい絡ませちゃいます笑コメントありがとうございました!! (2020年3月12日 21時) (レス) id: 0223a8e0a3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:さくら餅 | 作成日時:2019年10月4日 16時