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まだ少し肌寒い春の初旬。珍しくボスが尋ねてきたと思ったら、いきなり頭を下げられた。
「すまない、Aくん!手違いで食材の発注が間に合わなかったんだ」
「あー……それはちょっと困ります、ね」
注文したものの中から一週間何を作るか決めているのに、食材がないとなるとまた一から考え直しだ。
「本当にすまない……良ければ今日は町に買い出しに行って欲しい」
「はい。それは全然大丈夫ですよ」
「荷物が多くなると思うし、誰か同行させよう」
「本当ですか?じゃあ、中……」
「中?」
「あ、えっと……芥川くん、で……良いでしょうか」
とくん、とくん。優しく心臓が鼓動している。変だな……中也さんでいいじゃない。……なのに。
私、芥川くんと行きたいって思っちゃった。
「あ、芥川くんが断ったら中也さんでお願いします。大事なお仕事あるでしょうし……」
あんまり、迷惑にはなりたくないし……。
「うん、そうだね。多分芥川くんも大丈夫だと思うよ。君の願いだと言ったら……尚更ね」
「……?」
言っている意味が分からず首を傾げると、ボスはなんでもなかったかのようににっこりと微笑んで去っていった。
そして連絡が来たのはお昼だった。芥川くんは同行してくれると言ってくれたらしい。
それだけで胸がぎゅっとなった。
「お疲れ様です」
りん、とベルが鳴った先にすらりと細いシルエットが見えた。
「芥川くん!お疲れ様〜」
「……」
私が微笑みかけると芥川くんは驚きに少し目を見開く。
「な、何?」
服も髪もメイクもちゃんとしてたはず……と思い返すけど急に心配になってきた。
「あ……その、花がほころぶようだ、と思いまして」
「え?」
「な、なんでもありません」
そう言って、白い肌を仄かに赤く染めて俯いてしまった。その緊張が私にも伝染する。
今更だけど、これはデートにも近いのかもしれない。……あんまり意識しないようにしないと。
あくまで仕事のうち。頭の中で繰り返し唱えて、芥川くんを再度見る。
「じゃあ、行こっか」
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さくら餅(プロフ) - 紅玉さん» 最後まで読んでいただき、ありがとうございました!無事完結させることができて心底ほっとしております。私は貴方様のコメントにギュンギュンしました!笑本当にありがとうございました!! (2021年2月7日 15時) (レス) id: 0223a8e0a3 (このIDを非表示/違反報告)
紅玉 - 完結おめでとうございます!!!!尊いのと可愛いので私はギュンギュンしまくってました!!!!(ギュンギュンとはキュンキュンの進化系です!!!!) (2021年2月7日 12時) (レス) id: 835185f078 (このIDを非表示/違反報告)
(=^・^=) - 人虎に会いたい…。 by芥川 (2020年12月1日 15時) (レス) id: b3d6820988 (このIDを非表示/違反報告)
(=^・^=) - 厳しいわ。 (2020年12月1日 14時) (レス) id: b3d6820988 (このIDを非表示/違反報告)
さくら餅(プロフ) - ☆天香☆さん» ありがとうございます!!すっごく嬉しいです!文ストはキャラクターひとりひとりが個性的で大好きなので、つい絡ませちゃいます笑コメントありがとうございました!! (2020年3月12日 21時) (レス) id: 0223a8e0a3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さくら餅 | 作成日時:2019年10月4日 16時