赤い糸5 〜霊幻新隆side〜 ページ5
「甘い……」
そう口にして苦い表情を浮かべる姿にそういえばこいつ、甘いの苦手だったな……と思い出す。
「俺のコーヒーと交換するか?」
「はい。紅茶ってやっぱり甘いですね」
「砂糖が多めに入ってるんだろ、普通の紅茶はそんなに甘くないと思うが」
そうなんですか、と微笑する目の前のこいつは時々年相応に可愛い所が垣間見える。
……かと思えば雑だったり、甘いものが苦手だったり一人で焼肉に来たりと色々読めない奴だ。
交換した紅茶に口付ける。こいつが言っていた通りに少し甘めだな……。苦手なわけではないがあまりにも甘いと気持ち悪さが込み上げてくる。
「ん、良い感じに苦いです」
ゆっくりとティーカップに口付ける姿に、間接キスだな……なんてガキみたいなことを考えてしまった。
でも普通は男女で飲み物を交換するなんてことをしないから、意識するのは普通だろう。
そんな邪念を振り払うように、ゴクッと紅茶を一気飲みする。甘くて、甘くて……やっぱり少し気持ち悪くなるな。
「そういえば、髪下ろしてるの初めて見たな」
「へっ?あ、そういえば……そうですね」
肩ぐらいまでの髪をくるくると指に巻きつけながらずっと結んでると疲れちゃうので、と笑う。
いつも、馬鹿みたいに大笑いしている姿は事務所でよく見るが……こういう笑顔はなかなか新鮮だ。
「かわい……」
思わず漏れた声にやべ、と思いつつもAはそのまま別の話題を楽しそうに話し始めて、さっきの声は届いていないようでホッとする。
「(完っ全に無意識だったけど……やばいな、俺)」
周囲から見れば女子高生はみんな可愛いもんなんだろうが、こいつはなんだかまた違う枠で。
「ふぅ、ごちそうさまでした」
「ごちそうさん」
席を立って会計を済ませようとすると、Aが半分払いますよ!、と慌てながら止めてくる。
「良いって、割引券のお礼な」
「大人……ずるいなぁ」
チラリと横目でこいつを見るとレジの横に置いてある口直しの飴を一つ選んでいて。
その中におまけか何かで髪留めが混ざっているのに気が付く。
「これ、どうだ?似合うんじゃないか?」
「あ、可愛いですね。髪ゴム切れちゃったので、助かります」
指で差したのは、綺麗な赤いリボンのような髪留め。髪を結べば、その赤は黒髪と白い肌にはよく映えるだろう。
選んで手渡したそれが、運命の赤い糸のようだなんて言わないけれど。
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さくら餅(プロフ) - 抹茶さん» ありがたいお言葉頂けて光栄です!!もどかしい時間が長かった分、きっと未来では二人で幸せに暮らしてます! (2019年9月2日 19時) (レス) id: d6eb335a4b (このIDを非表示/違反報告)
抹茶(プロフ) - とっっっっても面白かったです!!未来の2人が幸せに暮らしているところが自然と思い浮かびます! (2019年9月2日 19時) (レス) id: b5b208b71b (このIDを非表示/違反報告)
さくら餅(プロフ) - ただのアニメ好き☆さん» コメントありがとうございます。嬉しいです!応援は執筆の力になりますので頑張ります( ´∀`) (2019年5月2日 15時) (レス) id: d6eb335a4b (このIDを非表示/違反報告)
ただのアニメ好き☆(プロフ) - この作品もお話とっても素敵です!作者様の事陰ながら応援しています!体調に気をつけて無理をなさらずに更新頑張ってください! (2019年5月2日 15時) (レス) id: 4ee9350697 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さくら餅 | 作成日時:2019年5月2日 12時