赤い糸20 〜霊幻新隆side〜 ページ20
「美味しかったぁ〜」
ふふ、と幸せそうに笑いながらソファーにだらしなくもたれかかるAの姿を見てため息を吐く。
魅力だ何だとか言ってたくせに色気とかそういうものの欠片もない。ついでに、遠慮という精神もないらしい。
人の家でこんなに無防備にくつろげるのも凄いと思う。良くも悪くも……。
「ジュース飲むか?」
「太るのでジュースじゃなくて、お茶ください」
「はいはい」
コップに温かいお茶を注ぎながら、熟年夫婦の生活みたいな感じだと思ってしまった。
最近思考がだいぶお花畑状態になってきている。どう考えても青春的な出来事に変わってしまう。全部、こいつといるからなんだが……不思議な感覚。
まぁ、青春時代と呼ばれる時間をそんな風に過ごさなかったからなのか、新鮮感はある。
学生時代、こいつと同級生だったら……的な。
「……ないな」
今以上に振り回されている俺が想像できた。想像の中だけでもすでに大変そうだった。思わず苦笑してしまう。
目眩がしそうなくらいのスピードで回っていきそうな、そんな楽しそうな毎日。
「なぁ、もし俺ら同級生だったらさ。どんな感じだと思う?」
「うーん……間違いなく霊幻さん、私のパシリになってますね」
躊躇いなどなく、淡々とそう告げる。年上にパシリだぞ?まぁ今は同級生だったら、って想像だけど。
「……逆、だな」
パシろうとしてるけど、根の優しさから逆に利用される奴。
お人好しじゃないけれど、それに近い感じの損な役回り。
「なんか、一通り想像したけど今の方がいいかもな」
関係性は曖昧だけれど、年関係なく笑い合える関係。それは学生時代の友人よりも時に楽に接せるのではないか。
「……寝たのかよ」
無意識に、髪を撫でて。サラリとした髪に触れると指に伝わる感触にぐらりと視界が揺れる。
「(やばい……)」
こいつは一向に起きる気配はなく、時間が止まるようなおかしな感覚。
抑えが効かないというのは、こういうことなのか。
気付いた時にはもう遅く、触れた唇の感触に目を見開いたAの表情がゼロ距離にあった。
「……い、」
「悪い、俺……!」
「嫌じゃなかったですよ、バーカ!!」
ドンッと俺を押し退け、鞄を持って出て行ってしまったAの後ろ姿をただじっと見つめていた。
「いや……そこは、最低とか怒るとこじゃねえのかよ」
冷静なツッコミが、いつも通りのようにその場に静かに木霊した。
80人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
さくら餅(プロフ) - 抹茶さん» ありがたいお言葉頂けて光栄です!!もどかしい時間が長かった分、きっと未来では二人で幸せに暮らしてます! (2019年9月2日 19時) (レス) id: d6eb335a4b (このIDを非表示/違反報告)
抹茶(プロフ) - とっっっっても面白かったです!!未来の2人が幸せに暮らしているところが自然と思い浮かびます! (2019年9月2日 19時) (レス) id: b5b208b71b (このIDを非表示/違反報告)
さくら餅(プロフ) - ただのアニメ好き☆さん» コメントありがとうございます。嬉しいです!応援は執筆の力になりますので頑張ります( ´∀`) (2019年5月2日 15時) (レス) id: d6eb335a4b (このIDを非表示/違反報告)
ただのアニメ好き☆(プロフ) - この作品もお話とっても素敵です!作者様の事陰ながら応援しています!体調に気をつけて無理をなさらずに更新頑張ってください! (2019年5月2日 15時) (レス) id: 4ee9350697 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:さくら餅 | 作成日時:2019年5月2日 12時