赤い糸で繋ぎ止めて 【霊幻新隆】

赤い糸21 ページ21

好きで仕方なくて、でも言えなくて。馬鹿みたいに意識しているのはきっと私だけなんだと、そう思っていた。


あれから数日。霊幻さんに会っていない。


正直、まだ全部あの時の状況を理解できているわけじゃない。


だって、好きなのは私だけなはずで冗談にしてもあの人は私の心を弄ぶようなことはしない。


私の気持ちにあの人が気付いていたのは、少し前から分かっていた。


分かった上で普通に接していてくれるんだから、私はこれ以上霊幻さんの領域に踏み込んではいけないんだと、勝手に考えて解決したのに。


そんな考えを、一瞬で壊してしまうんだから。霊幻さんは何を考えてるのか分からない。


昔からそうだ。あの人はずっと、私の手の届かないくらい遠いところで。


初めて会った時も……私をつまらなさそうに見つめたと思ったら急に優しくなったり。


全ての行動が理解できない。ずっと、側にいたはずなのに全然何もあの人のこと知らないんだ。


……少なくとも、あの時。私にキスをした霊幻さんは、私の知っている霊幻さんじゃなかった。


驚いて、嬉しかったのと同時に怖くなって。


ぐちゃぐちゃに混ざった感情にひどく目眩がした。


ただ純粋に好きだと思って、追いかけるだけの方が辛いと思っていたけれど、相手の気持ちが傾きつつあるのかもしれないと気が付いてしまうと、目を見るのも怖くなってしまう。


次に会うときはきっと、二人の関係に何か大きな変化がある。


「しばらくは……霊幻さんに会えないかもな」


自分の気持ちに整理をつけて、霊幻さんの考えが分かるようになるまでは。

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