赤い糸で繋ぎ止めて 【霊幻新隆】

赤い糸17 〜霊幻新隆side〜 ページ17

さっきから目の前で百面相してるこいつに、苛立ちながらも愛しさを感じる。


……なんだよ。バイトなんて聞いてねえし。一応、こいつが中学の時からずっと面倒見てきたようなもので、霊幻さん、霊幻さん！、といっつもしつこいくらいに尻尾振って後ろに付いてきたくせに。


それなのになんの相談もなしにバイトしてるなんて。俺のとこでバイトとか少しは考えなかったのかよ。


「その……さすがにそんな、迷惑は……」


俯いて少し頬を染めて、自分に気があることを分からない奴居ないだろ。


嬉しくない奴、居ないだろ。こんな愛嬌のある奴に好かれて。


突き放すとか考えていたくせに、繋ぎ止めろと叫ぶ俺もいる。優柔不断にも程がある。最低にも……程があるだろ。


またこいつの作った味噌汁飲みたいとか、勉強教えてやりたいとか、必要以上にこいつの店に頼む観葉植物とか。


笑った顔、怒った顔。寂しそうな顔、悲しそうな顔。バカみたいに依存してるのは俺の方だ。


「……バイト、どうする？」

「辞めるのにも手続きが大変なので、続行します」

「そ。じゃあシフト終わる時間に連絡しろよ。嫌になるくらい毎日送ってやる」


ひねくれた優しさも、こいつなら気付いてる。こんな形でしか守れない俺を許してくれ。


「あと……ここでのバイト、少し考えます」


くるりと身を翻して扉のドアノブに手をかけて、何かを振り切るように全速力で走っていってしまった。


「この……ツンデレめ」


強がった言葉とは裏腹に、体温が急上昇するのが分かって思春期のガキのようにすっかり熱を帯びた顔を覆った。

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