中学生アプローチ【佐野万次郎】 (ページ6)

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「と言うか佐野くんも早く帰りなよ」

保健だよりも完成し、時刻は17時半を回ろうとしている。外もだんだん薄暗くなってきた。

昼休みにもここに来るのに何も放課後まで遊びに来なくたって良いじゃないか。部活に入ってないならすぐ帰れるだろうに。

「せんせーだって帰んないじゃん」

「先生は今日は残業なんです〜。そろそろ暗くなっちゃうし帰った方がいいよ、危ないでしょ？」

そう言うと彼はむくれてそっぽを向いた。

「せんせーは俺の事子供だと思ってんの？」

「そりゃあそうだよ、子供だもん」

「あー今ので傷ついた〜！」

大袈裟に悲しんで見せる彼は

「でもそんなせんせーが好き」

なんていとも容易く伝えてくるのだ。恥ずかしげもなくサラッと言えてしまう彼の素直さはすごいと思う。

そして、好きなんて軽々しく口にしてはいけないとも思った。

「そういう言葉はさ、本当に好きな人が出来た時のために取っときな？」

そう嗜めると彼の上がっていた口角がスッと下がる。

「俺はせんせーの事本気で好きだよ」

いつになく真剣な表情にたじろいでしまう。君もこんな顔できたんだ、なんて失礼な事をかんがえてしまった。

「じゃあ私のどんな所を好きになったの？」

今まで私と佐野くんに接点は無かったはずなのに、どうして突然好意を寄せられ始めたのか

今まで疑問に思っていたものの聞けなかった事をついに聞いてしまった。

「初めて好きになった子となんか似てる所」

その言葉にやっぱりなと確信した。

やっぱり彼の私に対する気持ちは勘違いだ。

結局私を好きじゃない。そんな事は最初から分かっていたはずなのに

「なんだ、私を初恋の人と重ねてるだけじゃん」

私の発したその言葉は自分でも驚くほど冷たかった。

しまった、言いすぎた。

なんて気づいた時にはもう遅くて

佐野くんを悲しそうな表情にさせてしまった。

「ごめん、言いすぎちゃった」

傷つけてしまった事に頭を下げて謝ると

「いやいいよ、今日は帰る」

彼は堪えたように笑って保健室を出て行った。