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佐野くんが教室に戻った後、ホッと安堵のため息を吐く。
「ほんまになんなんやろ、あの子は...」
上京してしばらく経つが、住んでいた土地の方言は完全には無くならないもので、独り言を呟く時には無意識的に顔を出す。
まさか9つも年上の私が今年で15歳になるような子から好意を寄せられるとは。いや、やんちゃな佐野くんの事だから半分冗談みたいなものなんだろうけど。
初めはすぐに飽きるだろうと思っていたが、彼が遊びにくるようになったのが今年の2月からだから...
かれこれ3ヶ月程続いている事になる。彼の言う"恋の病"はなかなか治ってくれないみたいだ。
気持ちだけはありがたいものの、佐野くんはあくまで生徒だからそんな目で見るなんて当然出来ない。
私としては早く飽きてもらいたいものだと考えていたらまた佐野くんがやって来た。
「Aせんせー、また来たよ」
授業中でもお構いなしにくる自由な彼の成績が心配になる。というかさっき昼休みに遊びに来てからまだ1時間程度しか経っていないのに。そんな頻繁に来なくてもいいじゃないか。
「本当にすぐ来たね、まだ授業中だよ?」
「定期的にせんせーの顔見ないとやってらんねぇもん」
「私にそんな中毒性なんかないよ...単に授業が面倒くさくなっちゃったんでしょ?」
「それもある」
バレた?と言わんばかりに笑う佐野くんの表情に、不思議とどこか見覚えがあるような懐かしい気持ちになる。
「ほら、授業戻りな?」
教室の方を指して促すと
「えー、やだ」
眉間に少し皺を寄せて嫌がる佐野くん。
「先生は授業をしっかり頑張って受ける子が好きだなぁ」
「まじ?じゃあ戻るか!」
「ん!えらいじゃん」
さっきまでの表情から一転、パッと明るくなった彼は授業を受けに戻って行った。
早く飽きてほしいなんて思いながらも彼の好意につけ込んで操る私はずるい大人かもしれない。
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作者名:なる | 作成日時:2022年8月9日 15時