中学生アプローチ【佐野万次郎】 (ページ3)

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あれからしばらく経ち変わった事がある。

佐野くんが授業中に姿を見せることがパッタリとなくなったのだ。

彼が来る回数が減った事によって仕事がすごく捗っている。

おかげで今する事も特に無くなってしまったので、お茶を飲んでひと休みしていると

ガラガラと保健室のドアが開く音が聞こえた

「雪村先生！」

「あ、小栗先生！どうされました？」

入って来たのは3年生のクラスを受け持っている小栗先生だった。

彼は私と同期の数学教師で、その優しげな雰囲気と整ったルックスから女生徒にに人気があるらしい。

「実は今僕の授業が無い時間でして...先生も休憩中ですか？」

お茶の入ったマグカップを見ながらそう尋ねてくる先生に

「実はそうなんです、良かったら先生もご一緒しませんか？」

と勧めてみると彼は嬉しそうに首を縦に振った。

「ありがとうございます！是非頂きます！」

温かいお茶を一口飲んでから彼は話し始めた。

「実は雪村先生にお礼を言いたくて...」

「え、私にですか？何かしましたっけ...」

小栗先生からお礼を言われるような事なんてした覚えが無いので首を傾げていると

「佐野のことです！」

「あぁ、佐野くんですか！」

そういえばこの人は佐野くんのクラスの担任だったっけか。

「佐野が毎日教室で授業を受けるようになったのはきっと雪村先生のおかげだと思いまして...本当にありがとうございます！」

大袈裟なくらい深々と頭を下げようとする先生を慌てて止める。

「いや、私は大した事は何もしてませんよ！頭を上げてください！」

「そうなんですか！？でも、僕本当に嬉しくて...あれ？お茶がなんかしょっぱい...」

「それ先生の涙です...」

1人の生徒の事でここまで感激できるなんてすごく優しい先生だ。

それにしても私のあんな一言から、佐野くんは本当にしっかり授業を受けるようになっているみたいで嬉しい。