99 兄妹 ページ13
妹はカタカタと震える手を押さえつけながら、依然として回復魔術をかけ続けてくれる。そんなに魔力を使ったら、妹に負担がかかってしまうのに。
「もういい、俺は平気だ」
「だめ」
「しんどいだろ？無理しなくていい」
「無理じゃない」
「俺よりお前の方が」
「……私のことはいいの」
頑なに拒む妹に押され、渋々黙って治療を受ける。
段々と脇腹の傷が塞がっていく。治療が終わると突然妹の体が前に倒れてきたので、受け止める。
「おい大丈夫か！？」
「うん……私の家系魔術の
とりあえずほっと一安心する。生死にかかわる後遺症とかじゃなくてよかった。
「お兄ちゃんごめんね、いきなり攻撃しちゃって……。あいつと目が合ったら急に自分が自分じゃなくなっちゃって…」
「まさかあいつは洗脳ができるのか？」
「多分ね……だから気をつけてね……」
段々とまぶたが落ちていく妹に、俺は優しく頭を撫でる。
「ゆっくり寝ておけ。俺が全部終わらせてやるからな」
「……うん……」
ゆっくりと寝息をたて始めた妹を、邸宅からほんの少し離れた草木が生い茂るふかふかの土の上に寝かせてやる。
もしかしたらこれから戦闘が始まるかもしれない。
ならば被害の少ない場所に寝かせた方が安心だ。
さあ、ルキフグスに話を聞かなければいけない。
妹を手駒とした理由、俺を引き入れようとした理由、そして本当に俺たちの運命の元凶となった人物なのか。
＊
館へと戻ってくると、状況は酷いものだった。
ボロボロになったアザゼルさんの部下たちが床に伏している。
一体何が起こったかは分からないが、あの警備局の人たちを戦闘不能にさせるほどルキフグスの力は絶大だということは分かる。
家の調度品や壁紙はズタボロになっており、その惨状は奥の廊下まで続いている。俺はそれを辿るようにして奥の部屋へと向かった。
そこには、部下2人と戦うアザゼルさんがいた。
すわ仲間割れかと思えるような光景だが、先程の妹の話を鑑みると、ルキフグスの洗脳の力のせいで仲間割れを仕向けられたのだろう。
唯一正気に見えるのは、アザゼルさんだけだ。
「っアリスくん？！こっちに来るな！」
俺の気配に気づいたアザゼルさんは、部下からの攻撃を受け止めながら、叫ぶ。
しかし俺とてすごすごと帰るわけにいかないんだ。
辺りを見回すが、ルキフグスの姿は見えない。
一体どこへ逃げた？
「なーんだ、君1人？」
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南条(プロフ) - 雪見大福さん» コメントありがとうございます！労いのお言葉大変染みます〜次回作も考え中ですので、気長に待っていただけると有難いです！ (2022年10月28日 8時) (
レス) id: 97d2c6287f (このIDを非表示/違反報告)
雪見大福(プロフ) - これからも無理せず頑張ってください！楽しみにしてます (2022年10月22日 23時) (レス) @page23 id: 4031fb98ab (このIDを非表示/違反報告)
南条(プロフ) - 朱莉さん» 温かいコメント有難うございます！そのような声をいただけると作者冥利に尽きます。楽しんで読んでいただきありがとうございました！ (2022年10月10日 23時) (レス) id: 97d2c6287f (このIDを非表示/違反報告)
朱莉(プロフ) - 完結お疲れ様でした。設定がめちゃくちゃ好みで、いつも更新される度にワクワクしながら拝読してました。凄く面白かったです！素敵な作品をありがとうございました！！ (2022年10月10日 22時) (レス) @page23 id: 4569dbbd6e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：南条 | 作成日時：2022年8月28日 23時
