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88 お願い ページ1

翌朝、俺はテレビのニュースを見て唖然としていた。

そこに映し出されていたのは、魔界の膿そのものだった。

十年前とある犯罪者更生施設で、移送された犯罪者や誘拐された悪魔を使っての非人道的な人体実験が行われていた。
詳しい実験内容については伏せられていたが、被験者のほとんどが亡くなっているということから、どのような実験が行われていたかは想像に容易い。
しかし同時に、生き残りが数人いることも報道され、名前は伏せられていたが、俺がその生き残りだとも暗に示されていた。
今後マスコミは、この件の首謀者である元13冠を告発するらしい。


あの日、俺を突撃してきた記者が言っていた通りのことが、ニュースに流れている。全て妄言だと思っていたのに。
しかし到底信じられる話では無い。だって本当に身に覚えがない。

まさかまた記憶処理でもされたのか?そう思い、母上の方を振り向く。しかし母上もまた、体が固まっていた。

「いやっ、まさか、そんなはず……」
「母上?」
「……このニュースが本当かはアムちゃんにも分からないわ。
でも、少し思い出したことがあるの。昔貴方がほんの数時間だけ行方不明になったことがあって、屋敷を探しても見つからなくて、通報しようと思った矢先に、草陰の中で寝ていたのが見つかったの。
あのあとアリスちゃん暫く高熱を出したけど、お医者様に見せても特に異変はないと言われたから、そのまま届出は出さなかったのだけど……」

その空白の時間で、本当に俺に何かがあったというのか?

とりあえず俺のことは置いておく。
おそらくこのニュースで、世間の現13冠への信用が落ち、不信感が募っていくだろう。
そうすればこの家に報道陣が来たり、母上にも謂れのない言葉が降り掛かったりするかもしれない。それは俺自身も。

「アリス様。本日は学校をおやすみされては?」

ダヴィデの提案に、俺は首を振る。
ジャズたちが待っているだろう。もう数日で終末日だし、予定も詰めたい。
俺は学校に行きたい。

「……そうですか。では馬車をご用意しましょう。私が運転致します」
「ああ。よろしく」

学校への支度をし始めた俺に対し、母上は真剣な眼差しで引き止める。

「アリスちゃん、今日は休んで」
「母上」
「心配よ。今回ばかりは本当に。あのね、たまにでいいの。アムちゃんのお願いを聞いて…」

涙目で少し震えながら、手を取られる。
ああ、ダメだ。こんな顔をされたら、流石に。

「…わかったよ」

頷かざるをえない。

89 再会→



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南条(プロフ) - 雪見大福さん» コメントありがとうございます!労いのお言葉大変染みます〜次回作も考え中ですので、気長に待っていただけると有難いです! (2022年10月28日 8時) (レス) id: 97d2c6287f (このIDを非表示/違反報告)
雪見大福(プロフ) - これからも無理せず頑張ってください!楽しみにしてます (2022年10月22日 23時) (レス) @page23 id: 4031fb98ab (このIDを非表示/違反報告)
南条(プロフ) - 朱莉さん» 温かいコメント有難うございます!そのような声をいただけると作者冥利に尽きます。楽しんで読んでいただきありがとうございました! (2022年10月10日 23時) (レス) id: 97d2c6287f (このIDを非表示/違反報告)
朱莉(プロフ) - 完結お疲れ様でした。設定がめちゃくちゃ好みで、いつも更新される度にワクワクしながら拝読してました。凄く面白かったです!素敵な作品をありがとうございました!! (2022年10月10日 22時) (レス) @page23 id: 4569dbbd6e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:南条 | 作成日時:2022年8月28日 23時

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