出発 ページ4
まだ朝日も登らず、辺りは暗闇と静寂に包まれていた。
一瞬まだ夜中か?とおもうが、
時計が指す針は4時。
ああ、そろそろ行かねば、と体を起こした。隣で寝ていた夕朔はまだ規則正しい寝息を立てている。
小声でみんなに「行ってきます」と呟く。
返事はない。当たり前か。
袴を着て、法被を羽織る。
そして荷物を抱えて刀を腰に差すと丁度長老と父上が起きてきた。
「お早う。よく眠れたか。」
いや、よくも昨日の爆弾発言のあとにそんな事言えるな…
…なんて長老に向かって言えないので、
ええ。
とだけ返しておいた。
「馬は出しておいたぞ。気をつけて行ってらっしゃい。」
父上が私の頭を撫でると、やはり安心する。
気合をいれ、
「行ってまいります!」
と一礼をした。
馬に乗って振り返ると、まだ大きく手を振っている2人の姿がある。
しかしその姿もどんどんと小さくなっていき、終いには木々に隠れて見えなくなった。
……ああ、憧れのお江戸だ。
今になって忘れ物が心配になったが、まあどうとでもなるだろう。
丁度朝日が登ってきた。
光が山々を明るく照らしている。
ああ、眩しい。
お江戸は、もっと眩しいのだろうか?
期待と、不安を抱きながらも、ご来光を見上げると、勇気になる。
どんな人に出会うのかな?
綺麗な人かな、優しい人かな。
淡い期待が胸にこみ上げてきた。
仕事を忘れてはいけない分かっていても、やはりそっちの方が気になる。
これが俗に言う、「若い」ってやつか。
そんな呑気な事を思いながら、旅路を急ぐ。
……今の私は、あんな出会いがあるなんてまだ知らない。
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作者名:師走 | 作成日時:2017年1月29日 20時