日常19:俺だって ページ20
パシッ……!
開いた窓からこちらに向かって飛んでくる野球ボール。飛び出そうとした私。……一瞬のことだった。
身構えた純くんに当たると思われてた球は総悟の手の中に握られていた。
「……あぶねェな」
「よ、かっ……たぁ……」
さ、さすが総悟………。
総悟がいなかったら確実に純くんに当たってただろう。総悟の運動神経の良さに感謝……。
「ご、ごめんなさい……!」
「……どこの国民的アニメの魚類だお前らは。野球やんならもっと広い公園いけ」
慌てて謝りに来た2人の男の子。
総悟はそう言いながらボールを2人に返す。
「だって庭の外出ちゃダメって……」
「……仕方ねェ」
しょんぼりする男の子を見て、おもむろにスマホを取り出し何かを打ち込み始める総悟。誰かとメッセージのやりとりをしているようだ。
こんな時になにをしてるんだ……?
しばらくするとそれをポケットにしまう。
「いいか、今からV字前髪の男がここに来る。そいつは悪の魔王マヨネラーでさァ。そいつ叩きのめすまでお前らのおやつおあずけな」
「わああ!魔王が来るぞぉぉ!」
土方くんかな。そうだよね。土方くんだよね。
かわいそうに……。同情するけど、土方くんも来てくれたらだいぶ助かるかな。
「おい、大丈夫か」
腰が抜けたのか立ち上がれないでいる純くんに手を差し伸べる総悟。だが純くんはその手を取ることも、立ち上がることもしない。
「……俺だってあれくらいよけれた」
俯き、少しふるえた声でそう言う。
「……そーかィ」
「っお、女の前だからってかっこつけてんじゃねーぞ!」
「かっこつけてなにが悪ィんだ?」
突然声を荒らげる純くんに淡々と言い返す総悟。
「え……」
「……男がかっこつけんなァ、惚れた女の前だけでさァ」
「……」
総悟……。
少し悔しそうに下唇を噛む純くん。
「だからくだらねェ意地張ってねェでおやつ食いに行きやすぜ。俺も腹減ってんでィ」
そう言われると純くんはすくっと立ち上がり、総悟にも隠れていた私にも何も言わずにリビングへ行ってしまった。
36人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:さくらんぼ | 作成日時:2018年6月19日 7時