日常13:あの総悟が ページ14
結局その日の総悟は1日中おかしかった。
いつもみたいにゴリラだの何だの暴言吐いてこないし。
歩いている時、必ず車道側を歩いてくれるし。
「ほら」
「え、あ、ありがとう……」
どこか店の中に入る時は必ず扉を開けてくれるし。
「あれほしい」
「おう任せとけィ」
ゲーセンで欲しいって言った物取ってくれるし。
「き、記念にプリクラでも撮らない!?」
「撮りたいんですかィ?いいですぜ」
……プリクラも撮ってくれる。
いつもなら、嫌だ。めんどくさい。で終わるであろう。そう言われるってわかってたから撮ろうなんて言ったことないけど。
「そろそろ別んとこいくかィ?」
「う、うん……そうだね」
どうしちゃったの総悟……。熱でもあるの?
そう言いたいがなんだか言える雰囲気でもない。
なんか本当に王子様になっちゃったみたい……。
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「そういやまだプレゼント買ってなかったな。どっか店入るか」
ゲーセンを出て次にどこへ行くか決めかねてると総悟は私にそう言ってきた。
「……いいよ、プレゼントは」
そう言うと総悟は少し驚いた顔をする。
「……なんでィ。人がせっかく」
「ごめん、でも本当にいいよ」
「……」
私は小さく笑った。
総悟のこの変な言動の理由、なんだかわかった気がするから。
「……妙ちゃんの仕業でしょ?」
「あ?」
「ほっぺについてた赤い手形も、様子がおかしい今日の総悟も」
これが妙ちゃんからの誕生日プレゼントなんだよね。きっと。私が妙ちゃんにあぁ言ったばかりにビンタされたんだと思うとなんだか申し訳ない。
「……不満でしたかィ?」
「ううん」
「王子なんてガラじゃねェなりに努力したつもりなんですけどねィ」
「嬉しかったよ。妙ちゃんの差し金だとしても」
本心だった。妙ちゃんに言われて渋々やってくれたんだとしても、あの総悟が私のためにここまでしてくれたことが何より嬉しかったから。
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作者名:さくらんぼ | 作成日時:2018年6月19日 7時