クロ短編集 【黒尾鉄朗】

私には、あなただけ　part4 ページ20

「……私けっこー欲張りなんだよ？覚悟しててね、クロ」

クロは顔を真っ赤にして、
何か言いたそうだけど言葉が見つからないらしい。

「……A、今日はやけに積極的なんだな」

「んー？そうかな？」

(いつも私がされっぱなしだしね〜。クロの照れてる顔見れるなら、たまにはこーいうのもいいかも…)

「ふーん、A……。…それは俺のことを誘ってるって受け取ってもいいんだよな？」

(…………嫌な予感)

「……そーいう意味じゃない！勘違いしないで！ほら、帰るよ！」

私は靴を取り出し、急いで履いて外に出る。
そしてなんとかごまかそうとするが、クロは私の話なんて聞いていない。

「そうか、Aはそんなに俺に可愛がって欲しいのか」

「……誰もそんなこと言ってない」

そしてクロは私の手を取って、嬉しそうな顔をして歩き出す。

私はクロに手を引かれながら、
クロは強気な方がいいなと思った。
その方が、クロらしいから。

でも、どんなクロでも好きな気持ちは変わらないけれど。

私は小声でこう言った。

「……クロ、大好きだよ」

クロに聞こえたかどうかは分からない。

けれど、

クロもきっと私と同じ気持ちだろう。




〜おまけ〜

帰り道、クロは急に立ち止まった。

「クロ？どうしたの？」

するとクロはこう言った。

「そういえば、お前さっき欲張りって言ってたよな？」

……たしかに言った。
言ったけど………。

「それが、どうかした……？」

「いや〜？Aが欲張りだってこと知らなかったからよ」

クロはニヤッと笑った。
この笑みは何を意味するのだろう。

そしてクロは最後にこう付け加えた。

「…………Aこそ、覚悟しとけよ？」

「………はい」

クロには逆らえない。

(調子乗ってあんなこと言うんじゃなかった…。)

fin.

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