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そっと大切な思い出をしまいこんで
手元にある翔太の字を指でなぞる
不器用な彼なりの
精一杯の愛情表現
すぐ樹くんとか男友達と遊びにいっちゃうから、しおりには寂しくないの?って言われた時もあったっけ
でもこーやって
寄り添ってくれる時もあって
あぁ、ちゃんと翔太は私を見てくれてたんだろうなぁ
なんで、今頃そんなことに改めて気づくんだろう
最後のあの日
翔太のいらついた顔がずっとずっと頭から離れなかった
今でも鮮明に残ってるドアの閉まる音
一方的に振られた私
そう思って当時は泣くことしかできなかったけど
多分彼も彼なりにいろんなことを思って
あの言葉を言ったんじゃないだろうか
ずっとずっとしまいこんできた
5年前の記憶
でも振り返れば
こんなにも温かい
少しだけ、ほんの少しだけ
もう一度翔太の面影に頼ってもいいですか
・
爆音のアラームに起こされる月曜日
週初めの憂鬱さに加え
先週の苦い思い出にすこし気が重くなる
でも今週は勝負の1週間
再度アポイントをもらえた金曜日までに
前回の修正点から改善案、そして前田先輩に負けない私なりの提案をださなくては
ふと目に入る、
昨日机に置きっぱなしだったあの日のチケット
これは過去にすがるなんてものじゃない
凛と胸を張って歩いて行けるように
もう少しだけ踏ん張れるように
私が私らしくいられるように
そう自分に言い聞かせて
いつも持ち歩くお気に入りの手帳にそっと挟んだ
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作者名:らいな | 作成日時:2020年4月2日 22時