34. 真似事。 ページ36
◇◆◇◆
「Aのお母さんって有名人なんだね！」
『……そんな事ないけど、』
「だってテレビでよく見るもん！」
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「AちゃんってあのMariaさんの娘さんなんだってよ！」
「そうなの！？通りで可愛らしい顔してる訳ね。」
「じゃあAちゃんも将来は作曲家になるのかしらねー？」
「お父さんは芸能事務所の社長さんだし……流石芸能一家って感じね！」
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"Maria"
＿＿＿聖母のように清く、美しい人であれ。
その名を授かった私の母は華々しく芸能界に舞い降りた。
タレントとして活動する傍ら、作曲家としても活動し、沢山の歌手に曲を提供している事やバラエティー番組での飾らない姿で一躍有名になった母は、人気絶頂だった1990年に所属事務所の社長だった父と結婚した。
そしてその4年後に私が生まれた。
多忙を極めていた母よりも父といる時間の方が多かった私。
"Mariaのようになりなさい。"
口癖のように父が言った。
その言葉はいつまでも私に付き纏う。
物心ついた頃からピアノを触り始めた。
類まれな才能を手に入れ、絶対音感を持って＿＿＿それが父の願いだと分かった時、私は絶望した。
＿＿＿＿父が見ているのは私であって私じゃないから。
中々会えない母には、自分からピアノを始めた事は言わなかった。言えるタイミングが無かったし、仕事から疲れて帰ってきた母に言うと機嫌を損ねると思ったから。
そんなある日、
「A、ピアノやってるんだって？」
小学1年生の時、母に言われた言葉。
あまりに他人事のように話す母が衝撃的で、返す言葉が見つからなかった。
何て言うんだろうって言葉を待っていた。
頑張れって励ましてくれるのかな。
ちょっと期待してる自分。
ドキドキしながら待ってる私に母はこう言った。
「私のマネごとなんかしなくて良いのよ。」
『えっ、』
「貴方のやりたい事をやりなさい。」
今思えば、母からのメッセージだったのかもしれない。両親に囚われずに自分の好きな事を見つけなさいと言われていたんだと思う。
だけどまだ幼かった私の心は酷く傷ついていた。
物心ついた時から何となく続けていたせいか
自分が何のために音楽をやってるのか分からなかった。
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作者名：aki | 作成日時：2020年8月27日 1時
