3. また会えたら。 ページ4
(2011.11)
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ももちゃんの言ってた事……考えたけどよく分からなくてモヤモヤしたまま下校時間になってしまった。
ももちゃんに一緒に帰る？って聞いたら委員会があるんだって。
少し寂しい気持ちのままギターを持ってあの公園に来た。
18時を過ぎると外はすぐに暗くなる。
風が段々冷たくなったなぁ。
もう冬はすぐそこだ。
私もそろそろコート出さないと本気で風邪引いちゃう。
ザッ、と砂を踏む音。
近くで聞こえた心地いいその音に顔を上げた。
「………っ、はぁ……」
『っ、え……』
「はぁ………こんばんわっ、」
息を切らしたあの時のお兄さんが、そこに立っていた。
吃驚して声が喉奥につっかえたみたい。
何か喋ろうと思っても上手く言葉が出てこなくて、ただお兄さんを見て『なんで、』と呟いた。
会えないと思ってた、
この2日間公園に来なかったからもしかしてこの辺に住んでる人じゃないのかな、って思った。
もしかしたら、また会えるんじゃないかって
変に期待してた自分が恥ずかしいと思った。
「これっ、………返そうと思って」
息を整えながら、差し出されたビニール傘。
わざわざこれの為に来てくれたの？
『ただのビニール傘なのに、』
「でも名前書いてたから……」
ほら、と持ち手を見せてくれた。
そしてまたあのマシュマロみたいな優しい笑顔で笑う。世界に色が付くような、不思議な感覚。
「名前を書くって事は、大事にしてる物だと思って。それに持ち主はAちゃんでしょ？」
『っ、……はい』
「貸してくれて本当に有難う」
『と、とんでもないです！そんな……』
「でもホント助かったよ、」
"ありがとね"
微笑んだお兄さんの周りはお花が飛んでるの？
そんな優しいオーラが漂っている。
さっきまで緊張してたのに、
『私も、ありがとうございました、』
「んふ。じゃあ、俺もう行くね」
立ち上がったお兄さんにつられて私も立ち上がる。
行っちゃう、
どうしよう……と思った時にはお兄さんは既に歩き出そうとしていて、
『あ、あの』
思わず呼び止めていた。
振り返ったお兄さんが「ん？」と呟く。
『ま、また、会えますか？』
真っ直ぐに目を見つめる。
"また"なんて確信のない約束なのに
お兄さんはホントに優しい笑顔をしていた。
それが少し、儚い。
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作者名：aki | 作成日時：2020年8月27日 1時
