23. 呪縛。 ページ24
◇◆◇◆
まるで暗い海の底に居るみたい。
何も見えないここは、多分夢の中で。
「A」
遠くで、お父さんの声が聞こえる。
やめて……来ないで。
「こっちへ来なさい。早く。」
激しく首を横に振ってもその声は近づいてくる。
一生懸命に逃げた所で、ずっと続く暗闇にゴールは無い。それが私を地獄へ落とすんだ。
イヤだ……。
イヤっ、
.
.
.
(2011.12)
「………A？」
『…………っ、ももちゃん、』
「大丈夫？魘されてたけど………」
『う、うん。』
ベットに寝転ぶ体を起こしてももちゃんと向き合った。その声は、心配な色で染まっている。
そうだ。昨日からももちゃんが家に泊まりに来てて、それで………。
「………涙が出るほど怖い夢みたの？」
『えっ？』
「A、泣いてたから………」
……泣いてた？
頬を触ると少し濡れていた。
『………少しね。昔の事を思い出してたの。』
「………それって、」
『うん。お父さんの声が聞こえて、』
凄く怖かった。
本当に夢でよかったって思う。
これが現実だったら取り乱してたかもしれない。
幸せだった現実と相対する様に。
過去の破片が今も脳裏にこびり付いて離れない。
いや、離れられないんだ。
『私を連れ戻そうとしてた。』
いつまでも近くに居る様な気がして血の気が引いていく。あの人の考えてる事が今もよく分からないから……だから余計に怖いんだ。
ずっと見えない糸に縛られてるから。
飛び立とうとすれば連れ戻されて。
私は今も、ここから離れられない。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 87人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：aki | 作成日時：2020年8月27日 1時
