52話 ページ5
がむしゃらに走った。無意識に。もう何年も走っていない割には、体が自然と動いた。
初めて見る景色に夢中になった。私が知らない景色が広がっていたことに、世界の壮大さ、輝きを感じていた。
すると、昔、見慣れた姿を見たのだ。緑色の髪をした人が、フッと視界に入ったのだ。それを見た瞬間、昔のことを思い出した。
彼だ。きっと、彼だ。昔、一緒になって旅をした。時には、バトルをした。そして、彼とポケモンの話もした。会いたかった。今のイッシュ地方はどうなったのか？私の故郷はどうなったのか？それがどうしても聞きたかったのだ。
彼と思われる人物は、路地裏に入っていった。私は、その人物を追おうとした。すると、いきなり私の右手首が掴まれた。慌てて振り返ると、キバナが焦った表情をしていた。
「やっと、見つけたぜ………！」
「キバナ………？」
彼は、息を切らしながらいた。しばらく、呼吸を整え、私に言った。
「まったく、勝手に何処かにいかないでくれねぇーか？探すの大変なんだぞ」
そう言われ、私は反省した。確かに、何も言わずに何処かに行こうとしてしまった。彼に、迷惑をかけてしまった。
「……ごめんなさい」
そう言うと、彼は私の頭を撫でた。
「反省したなら良いんだ。でも、良かった。A、見つけることができて」
そう言い、彼は微笑んだ。彼のその表情を見て、少しだけ視線を逸らした。ずっと、眩しく見える表情を見ていたかった。しかし、何処か恥ずかしさを感じた。それに胸がドキドキするような気がした。私は、どうしたのだろうか？そう思った。
すると、彼はもう見失うことがないように手を握ろうと、手を差し出した。私は、恐る恐る彼の手を握った。
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作者名：ナノセンチメンタル | 作成日時：2020年2月23日 20時
