誂えられた異世界人 (ページ41)

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38話ページ41

今思えば、もう一回あの狐に乗せてもらえば良かったのではないかと思ってしまった。既に時遅しなのだが…

ドサッ！

考え事をしていたせいで、誰かにぶつかってしまったようだ。私はぶつかった勢いで尻餅をついた。

「すみません…」

「いや…こちらこそ悪いな」

低い男の声が上から降ってくる。見上げると、真っ黒のマントで身を包んだ男だった。少し不審に思いながらも、差し出された手を握る。

瞬間、ビリビリと体が痺れ、そのまま私は力が入らなくなった。

「…見つけた」

フードで顔は見えないが、笑っているのだと分かる。体が全く動かない私は男を睨みつけることしかできなかった。

それをいいことに男は私の腹を蹴りつける。

「ガハッ…」

痛みを感じても、患部を押さえることもできない。

私は意識を失うまで蹴られ続けた。

…

気がつくと、そこは全く見覚えのない場所だった。怪我をしたところは全て治療されている。それもこれも目の前にいる男の仕業だろう…

「久しぶりじゃねェか…頂上戦争以来か…いや、こうやって話をするのは8年ぶりか？」

不敵な笑みを浮かべ、趣味の悪そうなピンクのフサフサとしたコートを身につけた男、ドンキホーテ・ドフラミンゴは優雅にソファに腰掛け、私にそう話しかけてきた。

今にでも能力で攻撃し、この場から脱出したいが、そうはできなかった。何故なら、蜘蛛の巣に掛かった被食者のように、私の体は糸に絡め取られて全く身動きの取れない状態だからだ。次いでに言うと、まだ体の痺れが取れていない。あの黒い服の男が何をしたのか分からないが、能力者であることは間違いなさそうだ。

ドフラミンゴに注意しつつも、この部屋の様子を観察する。部屋は広く、飾られている装飾品は煌びやかだ。ドフラミンゴがいることからも、ここは王宮だと容易に予想がついた。

中央には目立つ大きすぎる四つの椅子があり、トランプを模しているようでダイヤ、スペード、ハート、クローバーの形をしていた。
そして、そのハートの椅子には、血塗れのトラ男の姿があった。怪我はひどいもので、(恐らく)海楼石の錠もされている。

「無視とは悲しいねェ…」

「私はお前と話をするつもりなど一切ない」

〜〜
タイトル変更しました。
「誂(あつら)えられた異世界人」と読みます

‘誂えられる’とは「思い通りに作られた」という意味です。