HERO.42 ページ44
火傷なんかじゃすまされない。
「と、うさ、ん」
燃え上がる父の姿。
そんな中で父は、
「ご、めん、な」
そう言ったのだ。
燃え尽きた父は地に伏せ、
焦げた腕や足は粉々に砕けちった。
「あ、あ、ああああああ！！！！！！！！！」
母は泣き叫び、
私はただただ、焦げた父の側で、
涙を流すことしかできなかった。
「んー、脆いなぁ」
男は、淡々と言う。
そして、顔を挙げたときにはもうそこにはいなかった。
どこにでもいる幸せな家族。
それがこれから先も続くと信じていた。
「………………嬢ちゃん」
『…』
「………………………………悪ィ」
父にイレイザーと呼ばれていた男の人は、そう、ポツリと言った。
その目は、
静かに揺らいでいて、
今思えば、
先輩を亡くした辛さを圧し殺 していたのかもしれない。
より親い家族の前で、辛そうに見せないように。
その日から、母は病み、
声も出せない、動きもしない、
ただただ病室の椅子に座り、空虚な瞳で外を見つめる人形のようになってしまった。
そんな状況でも、弟は運よくも健康に生まれ、
その時だけ、母は一樹を抱き、静かに涙を流して、「………一樹」と小さく名を呼んだ。
少しして、兄が帰ってきて、
父の葬式に参列し、私たちと一緒に住むことを決めた。
「……じゃあ、親戚の人達に挨拶してくるから、
一樹、よろしくな」
『………ん』
まだ幼子の一樹を抱っこし、
たくさんいる葬式参加者から離れたところの椅子に腰かけた。
『………イレイザーさんは、父の顔を見ないんですか？』
「…」
後ろの席に座っていたのは、
あの日父と戦ったイレイザーさんだった。
「……もう、見た」
死体はない。
もう、焼き尽くされてしまったから。
だからそこにあるのは遺影だけ。
「……これから、どうする」
『………兄が、私たちとこの街で暮らすそうです。
親戚から、少し援助してもらいながら』
「そうか」
『………イレイザーさん、ありがとうございました』
「………………………………お礼を言われることはやってねぇよ…」
うつむいて、ガシガシと頭をかきむしる。
『………イレイザーさんが来てくれなきゃ、きっと父さんは、もっと早くに死 んでしまっていたかもしれない。
けど、イレイザーさんが来てくれたから、
だから、ありがとうございます』
目頭に熱を覚えながら、まだ幼い一樹を見つめて、
そう言ったのだ。
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ku- - 夢主のさっぱりとした性格が凄くお気に入りです。話の構成とかも読みやすくて、楽しくすいすいと読ませて頂いています♪ (2017年8月20日 1時) (
レス) id: a39dedaf45 (このIDを非表示/違反報告)
マキ猫(プロフ) - 絞凛さん» イラストの絵柄がめちゃめちゃ好みです！！！！清々しさというかヒロインだけどヒロインヒロインしてない感じというか…！何言ってんだ自分。お話も面白くて楽しく読ませてて頂いてます(^^)連載頑張って下さい！ (2017年8月11日 21時) (レス) id: 96742f9bf8 (このIDを非表示/違反報告)
絞凛(プロフ) - ぐれーとまっくすな手毬。さん» コメントありがとうございます！誤字など多くてすみません…。気づいたら修正していきたいので、もしあればご指摘お願いします！ (2017年7月3日 18時) (レス) id: 88483ea5f2 (このIDを非表示/違反報告)
ぐれーとまっくすな手毬。(プロフ) - お話、とっても面白いです！その分ちょっと、誤字の多いのが目立ってしまう気もします……もったいないなあ、と思ってしまいました。気を悪くされたならすみません。お話に一目惚れしてしまって、更新をすごく楽しみに待っているので、頑張ってください〜〜！！ (2017年7月1日 18時) (レス) id: 8cdc93238d (このIDを非表示/違反報告)
ゆぅた(プロフ) - 面白いですっ！、続きに期待…！ (2017年7月1日 15時) (レス) id: d306f97df7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：絞凛 x他1人 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/gen.php/novel/
作成日時：2017年6月12日 20時
