銀魂さくらさくら (ページ26)

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仇ページ26

夢主side

何が起きたのか、わからなかった。

何度もげんこつを喰らわされた。
何度も頭を撫でてくれた。
何度も剣を教えてくれた。
何度も優しく微笑んでくれた。

いつも、溢れてしまうくらいの愛情をくれた。

世界で一番大切な、唯一無二の、俺の救い。

その人は、俺の。

俺の一番大切な、唯一無二の仲間の手によって。

物言わぬ屍と、成り果てた。

高「銀時ィイイッ！！！！」

悲痛な獣の叫び声。
けれどそれは、すぐさま掻き消えた。
直後、香ってくる濃密な血の匂い。

晋助の目を目掛けて放たれた短刀。
それは晋助の左目を正確に貫いた。

嗚呼、晋助。お前の目に最後に焼きついたのは何？

変わり果てた師の姿？
守るべき仲間？

それとも。

討つべき、仇？

視界が、揺れた。

「ーーーーーあ」

襲って来たのは、灼熱の痛み。

そして、飛び散る、紅。

下卑た笑い声を聞きながら、ああ、斬られたのかといやに冷静な頭でボンヤリと考えた。
いつもなら勝手に反応する体は、こういう時に限って役に立たない。
体から力が抜け、膝をつく。
刀を差して踏ん張ってみようとするけれど、どうにも上手くいかない。血は流れ続ける。

熱い。痛い。痛い。

…痛い、痛いなぁ。

痛いよう。先生。

「っ、は、はぁッ、あ、ぐぅッ…」

天人の笑い声。振りかぶられる大きなエモノ。

死ぬのかな。そう思って目を閉じた時。

あの人の、声が聞こえた。

『ーーー約束ですよ。』

「ッ…！！」

『皆を、頼みますね。』

ザシュッ！！

持ち直した刀で、何も考えずに相手を刺した。
幾ばくか痙攣し、動かなくなった死体の上にドサリと倒れこむ。

そうだ。約束した。

約束したんだ。皆を守るって。

あいつと、銀時と、一緒に。

護るって、決めたんだ。

なあそれが、アンタの残してくれたものだってそう言うなら。

俺はまだ、死んじゃいけないのかねぇ。先生。

体がよろける。視界が霞む。
2、3歩後ずさると、後ろに地面がない代わりに、何やら冷たい感触があった。
それが川と気付くのにさえ時間がかかり、もうその時には遅かった。

「っ、ーーー！」

掴めるものなど何もないのに、手を伸ばす。
仲間に向かって。あの人に向かって。
届くはずのないこの手を目一杯伸ばした。

誰かが俺の名前を必死に呼んだ気がして。

誰かが優しく手を握ってくれた気がして。

そこであまりにあっさりと。

俺の意識は、途絶えた。