35 ページ4
「待て」
スナックすまいるに出勤しようとする私に
十四郎さんが声をかけてきた
「何が"待て"、よ。"待ってください"、ですよね?」
「るせェ...俺も今から用があんだよ」
そう言って彼は頭を掻いた
___今日も行くんだ、
何処にかって、そんくらい私にだって分かるけど。
「何処に行ってるか知らないけど、副長さんも大変ね」
ズルい事に彼に探りを入れ、顔を覗き込む
切れ長の蒼い目が私を一瞬捉える
「そうでもねェよ、」
そう言うと、目を逸らされた。
最近すぐ逸らされる
___私なんかした???
でも今の反応、完全に黒だったな、
女の所に行きますって、?
「お前、スナックも副長補佐も今のまま続ける気か?」
色々頭の中で考えを駆け巡らせている時に、聞いてきたのは彼だった
「そのつもりでいようと思ってる、」
副長補佐をしているからと言って、本職を疎かにしてはいけない。
キツいけど、出来るだけ頑張るしかない、
「夜の方、減らせ」
「え?」
彼は前を見据えたままそう言った。
「なんで?」と聞くと、煙を1つ吐いた
「最近物騒なんだ。暗闇の中女1人で歩くのは危険なんだよ」
「そういう事、」
だから、と話を切り出して言葉を飲み込んだ
"だから、今送ってくれてるの?"なんて...自意識過剰的な事は恥ずかしすぎて聞けない
いつも十四郎さんは私を心配してくれる。
でも、彼にとっては周りの人全員にもしている事であって、私だけ、とか...そんな特別な物ではない。
「大丈夫よ、悪者が出た時は私が倒すから!」
「んな事言って、後で泣く事ァ目に見えてんだよ」
「はは、よくお分かりで!」
笑いながら見上げれば見える、彼が笑っている横顔
真選組1__いや、私の中では江戸1の2枚目
酷い時の方が多いけど
本当はお人好しで優しすぎる、苦労人。
そんな彼の隣を歩いている
これまでは同志の妹として、
これからは仕事仲間として。
今なら分かる気がする
ミツバちゃんが十四郎さんの事を好きだった理由、
120人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:なんぱん | 作成日時:2020年5月19日 23時