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「待て」




スナックすまいるに出勤しようとする私に
十四郎さんが声をかけてきた




「何が"待て"、よ。"待ってください"、ですよね?」


「るせェ...俺も今から用があんだよ」




そう言って彼は頭を掻いた



___今日も行くんだ、

何処にかって、そんくらい私にだって分かるけど。





「何処に行ってるか知らないけど、副長さんも大変ね」





ズルい事に彼に探りを入れ、顔を覗き込む

切れ長の蒼い目が私を一瞬捉える






「そうでもねェよ、」




そう言うと、目を逸らされた。

最近すぐ逸らされる


___私なんかした???






でも今の反応、完全に黒だったな、

女の所に行きますって、?







「お前、スナックも副長補佐も今のまま続ける気か?」




色々頭の中で考えを駆け巡らせている時に、聞いてきたのは彼だった





「そのつもりでいようと思ってる、」




副長補佐をしているからと言って、本職を疎かにしてはいけない。

キツいけど、出来るだけ頑張るしかない、







「夜の方、減らせ」


「え?」





彼は前を見据えたままそう言った。

「なんで?」と聞くと、煙を1つ吐いた





「最近物騒なんだ。暗闇の中女1人で歩くのは危険なんだよ」


「そういう事、」





だから、と話を切り出して言葉を飲み込んだ

"だから、今送ってくれてるの?"なんて...自意識過剰的な事は恥ずかしすぎて聞けない





いつも十四郎さんは私を心配してくれる。

でも、彼にとっては周りの人全員にもしている事であって、私だけ、とか...そんな特別な物ではない。





「大丈夫よ、悪者が出た時は私が倒すから!」


「んな事言って、後で泣く事ァ目に見えてんだよ」


「はは、よくお分かりで!」





笑いながら見上げれば見える、彼が笑っている横顔

真選組1__いや、私の中では江戸1の2枚目



酷い時の方が多いけど
本当はお人好しで優しすぎる、苦労人。









そんな彼の隣を歩いている



これまでは同志の妹として、
これからは仕事仲間として。









今なら分かる気がする


ミツバちゃんが十四郎さんの事を好きだった理由、

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作者名:なんぱん | 作成日時:2020年5月19日 23時

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