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「本当のお前を教えてやりてェんだ俺ァ」
「本当の私...?」
「嗚呼」
彼は煙を吐いて、少し遠くを見つめる
「前にここに来た時、飯食ったよな」
「はい」
神威に連れられ、初めて此処に来た時
夜ご飯をご馳走してくれた。
美味しかったからよく覚えてる。
「お前、目の前にあったモン全部食ってたけど、
4人前は軽くあったぜ」
喉を鳴らして彼は笑った
___私は昔から人よりよく食べる
だけど全然太らない。そういう体質
「私なんかより神威の方が沢山食べてましたよ」
「だって俺夜兎だから」
隣にいる彼は笑顔で言った
神威が___夜兎?
「あれ?言ってなかったっけ?」
ポカンとしていた私に彼は首を傾げた
それに対して「聞いてない」と私は首を横に振る
「夜兎ってのはなァ、食べる量が尋常じゃねェんだ」
「だから私も夜兎だって言うんですか...!」
「夜兎とは言わねェ。
嘘____
そんな事ない。だって私は...
「近藤勲の妹、ってかァ?」
「あんなゴリラと全然似てないよ」
そう。
私とお兄ちゃんは全然似ていない。
目も鼻も髪の色、も__
「茶色だった、」
世侍と呼ばれるあの夜兎の髪は、綺麗なその色だった
「それと、俺たちは怪我してもすぐに治るんだよ」
ハッとして撃たれた所を見る
傷跡も綺麗になくなっていた
「何か心当たりでもあるかァ?」
私は自分に言い聞かせるように横に首を振った
「ねぇ、世侍って奴殺したのA?」
次は縦に首を振った
「"親殺し"、だね」
「なに、それ...」
「夜兎の風習だよ。自分の親を殺すのさ
俺もできなかったのになあ」
「___やっぱり夜兎の血、引いてるんだよAは」
"親殺し"
神威が言ったそれは、私の体に重くのしかかってきた
よく考えてみて___あの日の事を__
世侍は死際、私と話したいと言った
撃たれた所からの出血が止まっているのを見て、
驚いた顔をしていた
誕生日を祝ってくれた
呼び捨てで私の名前を呼んだ
探し物が見つかったと言い、涙を流していた
もう、分からない___。
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作者名:なんぱん | 作成日時:2020年5月19日 23時