55 ページ24
あの後、総悟に弁解してから部屋に戻った
"てっきり土方さんが手ェ出してるモンだと"
なんて言った彼の顔は変わらずむすっとしていた。
「はあ、」
本日2度目の溜息
___なんで普通の恋人みたいになれないんだろう
私の当たりがキツいからかな?
いや____あの人の方が何十倍もキツイわ...
やっぱり...私じゃ_
「A!ちょっと入るぞ!」
ガヤガヤとした廊下からお兄ちゃんの声が聞こえた
「どうぞ」と言うと扉が開き、総悟とお兄ちゃんと...
「土方サン、嫌々協力してやってるんでさァ。
しくじったら...わかってやすよね?」
「っ、総悟テメェ...この縄取りやがれ!」
「嫌でさァ...Aさんに取ってもらってくだせェ」
「ごめんなA!
トシは本命になると全然手ェ出せないから
こうでもしないと...」
「てことでAサン。
気に食わねェけどコイツ、よろしくお願いしやす」
そう言ってお兄ちゃんと総悟は部屋から出て行った
嵐の様に過ぎ去った今の一瞬...なんとも言えない。
最終的に残されたのは、手首足首を縛られ
目隠しをされた十四郎さんだけ。
どんな状況?と聞きたい所だけど、
総悟とお兄ちゃんの変なお節介だと予想は出来た。
「...外してくれ」
私は何も言わず十四郎さんの横に座って、縄を解いた
十四郎さんの両手が自由になって
目を覆われていた布を取ると、彼と目が合う
「悪りい、急に」
「...それは大丈夫、です」
先程の洗面所での喧嘩(もどき)の事を思い出して
自分の声が小さくなる
「それで、何か用ですか?」
「いや...特に、」
「特に?」
そう言うと、彼は少し改まって此方を向いた
「___万事屋、か?」
急に何を言い出すのかと思えば、
彼が嫌っている筈の人の名前を吐いた。
今日の事かな、と頭の片隅で思いながら
話の続きを待つ
「なんでよりによってアイツ、」
「___だって、十四郎さんが構ってくれないから」
明らかに嫌そうな顔をした彼に向かって言う
すると、口元を緩めて目を少し細めた
「ガキみてェな言い方だな」
またガキ扱い___
武州にいた時は彼によく"近藤さんの妹"だの、"芋女"だの言われていた
最近はあまり言われなくなっていたのに、
また言われてしまう羽目になるのだろうか。
120人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:なんぱん | 作成日時:2020年5月19日 23時