マチノソラ23

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「これありがと」


「仲直りしましたー？」



翌朝、会社でカーディガンの入った紙袋を渡せば
須藤は何でもないように受け取って



「…わかんない」


「わかんないって？」


「もういいとは言われたんだけど…何かスッキリしない感じで…」


「倫也さんかわいそー」


「前ならやだって言っても最後までいじめられたのに
…何でかな？」


「いじめたくないからじゃないっすかー」


「何で？」


「知らないっすよ」


「えー」


「全然反省してないっすねAさん」


「してるってば」


「そーは見えないっすけどねー」









.






.








仕事と習い事を終えた帰り道
人の流れの中に長いマイクや照明が見えた。


覗けば、バラエティ番組の撮影……？


このへんよく使われてるもんなぁ



この辺でロケ現場に遭遇する事は結構あって、今日は誰かと見れば倫也さんと倫也さんと同年代の女優さんだった



昔からの馴染みなのか気を許した顔をしていて
二人でふざけ合いながら何か話していて

昨日の出来事なんかなかったようにヘラヘラ笑う
あの顔も演技なのだろうか

それとも私が困らせてるだけで、今の穏やかな顔の方が本来の倫也さん……、なんだろうなきっと…、


ふと昨日の丸まった背中から聞こえた声を思い出せば




「あ」




ばっちり目が合った。




その目は、私なんか気づいてないみたいにすぐに逸らされて、心が一瞬きゅっ、と狭くなった。





いやいや、カメラ回ってるもんそりゃそうだよね…っ





「……………、」




なのに、急に須藤に言われた言葉がリアルになって

もしかしたらいつかこんな風に本当に呆れられて、
諦められてしまうかもしれない…なんて思えばすごく怖くなって、去っていく後ろ姿がすごく遠くに感じた

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