マチノソラ9

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玄関を開ければ、リビングから足音が近づいてくる


「おかえり」


「………ただいま」



顔が、見れない。



「ご飯たべてきたの？」


「…うん」


廊下を進み自室に入れば鞄をデスクに置いて息を吐く



このまま部屋に引きこもりたいけど…………
いつまでも顔を合わせないわけにもいかない



ゆっくりドアをでれば、廊下にもたれた倫也さんがいて身体が揺れる


「うわっ！びっくりしたっ」









「……………好きになっちゃった…？」






初めて顔を見れば寂しそうに笑っていて



「……………っ、なってない！」



「………そっか、」



ぎゅっと抱きつけば、罪悪感が寄せてくる



「倫也さん、」



「………」



「……………キスして」






ゆっくり降りてきた顔と優しく添えられた手に引き寄せられて、唇が重なる



「……………っ、」



優しかった口づけが少しずつ激しさを増して、壁に押しつけられるように貪られる


「んっ、倫也さんっ、」


止まないキスの中ぷつぷつとボタンを外されてワンピースが床に落ちれば、直接触れられる肌が温かい


濡れた頬の涙を拭う顔は切なそうで、それが苦しくて私も倫也さんの服の下に手を滑らせた







.







.







.









ベッドで裸で横並びに寝たまま、胸に顔をつける


「…………………………ごめん」


「……それは……どういうごめん？」


「わかんない…………」


「………………持ってかれた？」


「……………、、、」


「女優、諦めてくれる…………？」



「…………………………………、、、うん……。」




だめだ、




涙がぶわっと出てきて背を向けたけど
何の涙かわからない


背中から抱きしめられれば
もっと苦しくなって涙が溢れる



「……………ごめんね、A」


「っ、なんで…倫也さんっ、が」


「ごめん。」


「……………意味、わかんないっ、」



ぎゅっと強く抱きしめられて、でも苦しくて



「………本いっぱい書いてよ」


「……………っ、」


「俺にやってほしい話。」


「……………うんっ、、」


「Aの手の上で踊るから」


「ふふふっ、なにそれ………」


「カッコイイ倫也さん作ってよ」


「今以上カッコよくならなくていい」




「A」





振り向けば、優しいキスが降りてきて、ただそれを受け入れる私だった。

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