マチノソラ

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あれから、今日はこんなシーンを撮ってるとか、ご飯何食べたの？なんて連絡は来るけど、中々コーヒーを奢る機会はやってこない。撮影忙しいんだろうなぁ。

近所をブラブラしてみるも、そう簡単に会えるはずもなく。


「会いたいなぁ」


テレビで見てる時も好きだったけど
直接会って、普通に会話をして、もっと好きになっている自分に気づく。

でも、どこかでピンと線を引いて近づきすぎないように、これ以上好きにならないようにと言い聞かせてる

先を求めても自分が苦しいだけ。
そして私はまたいつもの日常に戻るだけだ。


「あぁあ〜もうこうしてやる〜〜〜！」


考えるのをやめて最近買ったばかりのとろみのあるふわふわルームウェアをわしゃわしゃ触れば、幸せなため息がでる。

薄い水色のボーダー柄で、下のショートパンツはちょっと短い気もするけど、その分可愛くて気分もあがる


「きもちぃ〜ちょっと高かったけど買ってよかった〜もうずっと触ってたい〜〜〜〜あー幸せ…………。
よし、うん。この幸せを胸にゴミでもだすか！！」


日常に戻るぞー！とばかりに無駄に気合をいれて立ち上がる。


このマンションは収集日関係なくいつでもゴミを出していいルールになっている。
前までは出勤ついでの朝に出していたけど、何度かおしゃべり好きな管理人さんに捕まって遅刻しかけたので、最近は溜まったら夜に出すようにしていた。

時計を見れば深夜1時すぎ。
この時間なら他の住人に会うこともほとんどない。
そのままの格好にカーディガンを羽織ってサンダルをつっかけた。

外に出ると、風呂上がりの身体にはまだちょっと肌寒く、カーディガンの前をおさえた。


「Aちゃん……………？」


ゴミを片手にエントランスを出てみれば、ちょっと先にジーンズに黒のシャツとハット姿。


「倫也さん………？お久しぶりですっ！」


会えた！


「何してんの」

「あ、ゴミ出しを…今帰りですか？」


そうだった。どすっぴんにパジャマだった、、でも、嬉しい！


「うん……。ねぇ、その格好………」

「いつもこの時間だと人に会うことないのでつい」

「………いつもそうなの？」

「このマンションゴミいつ出してもいいんですよ」

「そうじゃなくて、こんな深夜にそんな格好で外出てたら危ないでしょ？」

「あー…でも誰にも会いませんよ？」

「俺は今会ったよ？」

「あ……………。会いましたね……。」


「とりあえずもう入って。冷えるし人が来たら困る」

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