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自然な足運びで殺せんせーに近付き、ナイフを振り被る。そして、ふわり、と抱き着いた。

 瞬間、爆発音と小さく硬い物の飛び散る音。
 渚君の華奢な体は後ろへ吹き飛んだ。

貴方「なっ」

 何してるんだ。こんな話あった?
 横の寺坂達が喜声を上げて立ち上がる。

 中学生の悪餓鬼が、何してんだよ?
 最悪失明するぞ。治療費払えば良いとかじゃないし、成功しなかった時でも怪我の可能性はあるんだ。考えなしにも程がある。

 子供って本当に何しでかすか分からない。

寺坂「なんだ、この膜」

 殺せんせーの脱皮した皮が渚君を守ってる。

 暗殺教室は物騒なテーマの割に大きな怪我も殺せんせーと敵以外の死亡キャラだっていない、東リベなんかと比べるとずっと平和な内容だ。
 大丈夫、そう思ってるけど、私がいる時点で絶対はない。

 これはアニメであった話の気もするけど、現実が見えた気がした。
 そうだよ、ここは、物語なんかじゃない。

 武道は、アニメで描かれてない部分、タイムリープしていない武道だったし、タクヤについては詳しく知らなかった。
 それに、身近過ぎた。
 だから気付けなかった。情けない。

殺せん「寺坂、吉田、村松」

 ショック療法で強制自覚させられた現実に狼狽えている間に話は進んでいた。
 殺せんせーの顔は真っ赤に染まり、教室の温度は数度下がっているように感じる。あぁ、怒ってる、当然だ。

 殺せんせーは私達の家の表札を回収し、私達を脅す。

 殺すなんてただの脅し文句で本当はするはずない、アニメの通りの殺せんせーならば。
 でも、今ここにいる殺せんせーは、どう?

 考えても分からないし、見て聞いて話して実際に判断するしかない。

 あぁ、残酷だなぁ、とひとりごちる。なんで私はここをアニメって知らなきゃいけないんだろうって。
 仕方ないけどね。思い出しちゃったものは思い出しちゃったんだし。
 結構図太い方なので、いずれ分かるさと飲み込む。
 それでもやっぱりちょっと、チクリとするけれど。

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作者名:mol/L | 作成日時:2022年8月3日 20時

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