【文スト】不器用な理想主義者。

第八章…予定の狂い。 ページ9

俺の言葉に、Aは静かに瞬きを繰り返した。


………。


俺は今、何と言った！？


俺は阿呆か！


今日、弱音を吐くとは手帳に書いていない！


両手を恐る恐るAの頬から離そうとした。


すかさず、手を捕まれる。


俺の手と違い、Aの手は小さくて細かった。


『…………ｯブフッ。』


「！？」


Aが急に肩を震わせながら笑い出した。


「な、何を笑っている！俺は」


『…ははっ、すいません。
国木田さんの発言が、あまりにも可愛くて。』


「可愛ｯ！？」


『先程の質問の返答ですが、私は国木田さんのことを充分頼っているつもりです。』


「………本当だな？」


『はい。流石に此処まで気は許しませんよ。』





彼女の笑っている顔に、酷く安心感と、欲を抱いた。


……どうせ、少し予定は狂っている。


今更何かしても、予定に其処までの狂いはないだろう。


俺は、背丈が少し小さいAの顔に、腰を曲げて距離を縮めた。





唇に柔らかいものが当たった瞬間、すぐに離す。


Aはみるみる顔を赤くしていった。


俺もつられて暑くなる。




そして少し考えた後、Aの手を掴み、歩くのを再開した。



この感情は、複雑で面倒臭いが、








Aとなら良いかもしれん。





この件については、手帳に記して置こう。

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