投獄110 悟空猿鬼視点 ページ17
俺は胸が張り裂けそうになる衝動を一生懸命堪えた。やはりNo.∞も【被検体】だったということ
ならば俺がすることは一つ。この神が取り憑いた状態のNo.∞を殺さなければならない、それが俺の、今やらなくてはいけない事
その筈なのに……いざNo.∞を目の前にして俺は拳が震えた。殺せるか否か、勿論否だ
「俺が、どれだけこの時を……」
恐れたか、その言葉を俺は飲み込んだ。地下牢でNo.∞に会ってから俺は可笑しくなっていたのだ
No.∞に会うたびに高鳴る鼓動に嘘など付けない。やっと会えたあの瞬間、俺の胸は有り得ない程高鳴っていた。殺さなくてはいけないと、少しながら悟りつつも
「……！」
15番の気配を察知した。No.∞を殺めたくないという俺の弱さから、すぐさまそちらに身体を傾ける。猿門が何か言っているが、俺はそれを無視し一直線にそちらに駆ける
「…またお前か」
奮った拳を受け止められた。その相手は勿論──
「やっと出れたと思ったらこれかよ…。随分派手なことしてんじゃねぇか。あぁ？大猿野郎」
「そこを退け」
「殺気出してるヤツの言うことなんざ聞くつもりはねぇな」
双六の言葉を聞き流し15番を見下ろす。奴さえ、奴の存在さえ始末すれば……
次はAだ
『ドガァァンッ！』
奮った拳の先には誰もおらず、視線を別の所へ動かすとそこには15番を抱えた猿門が居た
「こいつが狙いなのはわかってる。本気で殺そうとしてんのもわかった……けどよ、そんなの兄貴らしくねぇよ。たとえどんな理由があっても、兄貴は【人】を殺さねぇ。それが俺の中の【悟空猿鬼】だからだ」
猿門の言葉をまた聞き流し、聞かなかったことにした。そして消えた15番を探す為足を進めた
《双六一視点》
「どうなってんだコイツは…！」
俺の動きを封じる念のこもった札に苛立ちを隠さずそう言い放つ。女が顔を顰めて俺に言った
「貴方を猿鬼さんには絶対に近付けさせません…！」
女がそう言った瞬間目を見開かせた。そして少しあのずさりをする
「そ、そんな…貴方は……！」
「？…っ！」
何を言っているのかと後ろを振り向けば、髪が伸び、瞳を赤く光らせ宙に浮く3010番の姿があった
「貴方の中に沢山の…人？いえ、人ではない……もっと強い何か……清らかな筈なのに、重苦しい……」
「神を重く苦しい物と例えるか、【見えてしまう】人の子よ」
話し方も、纏う気配も違う3010番。俺はそれを3010番とはお前なかった
お前は誰だ
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作者名：エルフ・シャープナー | 作者ホームページ：http:
作成日時：2018年1月25日 22時
