投獄108 冥国視点 ページ14
「今度こそ、逃がしはしない」
そう言った悟空猿鬼の瞳には熱い何かが宿っており、その瞳が急に冷たくなったと思うと、それは豚の方に向けられた
「【逃げろ】!」
「ぐっ…!」
言霊で何とか避けられた様だが、怪我を負ってしまった豚に近付こうと足を一歩前に出すと、犬に止められた
「離せ!彼奴は危険だ!」
「待て…今お前が行けば、猿鬼の思う壺──」
「俺以外が皆、敵以外十分には戦えん。俺が行くしかあるまい!」
そう言うと目を見開きつつも手を離した犬。俺は犬を座らせ手の甲に口付けした
「お前はまだここにいろ。完全に治っていないからな」
俺はそう言って踵を返し豚の元へ走った。豚を攻撃した男の中には…なんだろうか、何か別の、血統の似た女の気配がする
「豚!大丈夫か!」
「はっ…3010番があぁ言わなかったら…俺串刺しだな…」
「バカ!んなこと言ってる場合か!……!【我らを守れ聖なる盾よ】!!!」
強い気配、身震いするようなそれに俺はすぐバリアを張った。幾つもの瓦礫がバリアに弾かれ地面に落下していく
「…やはり、【そういう】類か」
男は女の姿となり、こちらを見据える。噂には聞いていたが本当に使えるものがいたとは……だが、あれは相当の体力を消耗すると聞いている。あの女…本体が危険に晒されていなければいいが
『パリンっ!』
「なっ!」
少しの油断でバリアが破られた。豚はその瞬間バリアのあった場所から俺を連れ逃げる
「うぐっ…はぁっ、はぁっ…30…10番、軽ぃけど…やっぱ痛てぇ、な……はぁ…」
「無理をするな豚!」
「その言い方…今だけはやめてくんねぇか?雰囲気ぶち壊しだわ」
そう言いつつ偶然近くにあった自分の武器を取り立ち上がるb──八戒。そしてシッシッ、と手を振られてしまった
「此処は俺に任せてくれや……最初っから、俺一人でやろうって決めてた事なんだ」
「だが…」
「…頼むから、これ以上俺の為に気ぃ張んな。お前の【言霊】とか、回復とか、そんなのに頼って終わらせたくねぇ」
「…八戒……」
こちらは唯役に立ちたいだけだと言うのに、目の前の男は自分の力で終わらせたいと思っているらしい
「…ははっ、初めて俺の事ちゃんと呼んでくれたな!やる気出たわ!」
ニカりと笑い俺に背を向けた八戒、此奴は本気だ。俺が手を出したらきっと怒る、それも全て此奴の当初の目的の為
「…役には、立つから」
「おう、そん時は頼む」
今は此奴の為に、他に何かやれることを探そう……
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作者名:エルフ・シャープナー | 作者ホームページ:http:
作成日時:2018年1月25日 22時