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枯れた月、終わる世界 ページ7

そして、それからだんだん人は消えていった。
わたしは、それでもずっと、消えることなくそこに存在していた。

しかし、いったいなぜ?



その問いに答えるものはいない。
もうすでに、わたし以外の人類は、存在していない。

始めのうち、消えることはないといわれていた動物たちも、だんだんと消えていった。
残っているのは、見たことも聞いたこともない生物ばかり。
それらが一体、何を意味するのか。



人々が消えて行ってから、丸一年が過ぎようとしている。
それでもなお、消えることなく存在する意味は?
この世界は、本物なのか?

わたしは、ただひたすら問いかけた。
何がどうして、こんなことになったのか。



存在するはずのない、誰かの声がきこえた。



『この世界は、もうじき終わります』
「えっ……」
わたしは驚いて、あたりをじっくりと、テストを解き始める優等生のように見る。
誰もいない。幻聴だったのか、と疑い始めると。

『あなたは、ただ一人、現実を冷静に見つめていました。だから残ったのです』
「つまり、どういうこと?」
わたしは問いかける。
さっきまでそこにいた動物たちの姿は、もうどこにもない。


廃墟と化した建築物。
干上がってしまい、荒れた土地。
自然の成り行きだと、そう思ってただ見つめていた。

『人類は、世界を壊しました。……もう、動植物たちが自力で生活していくことが困難だ、と
悲鳴を上げていました。その結果、人類を消しました。でも、同時に動植物たちも消えました。
もう、彼らは人類によって、生息地の安全すら失っていたのです』


そういうことか、とわたしは一人うなずく。
そこら中に建てられた建築物。
有害な煙を吐き出す工場、汚染物質をまき散らし、動物を絶滅させる――。
そんなニュースが、何度も流れていたじゃないか。



確かに、もう生きていくのには難しいところまで、わたしたちは動植物たちを追い詰めた。
言い方を変えれば、これは彼らによる報復なのかもしれない。

*→←変化



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陰月。(プロフ) - 佐奈さん» コメントありがとうございます。まず月についてですが、月は人々を見守っているものとしています。人々が自分勝手というのは、本来の自分の姿を、非日常に直面したらどうなるのか、勝手ながら推測して書かせていただきました。 (2019年2月17日 11時) (レス) id: 83a189451f (このIDを非表示/違反報告)
佐奈 - また、人々の様子は自分さえよければよい、という自己中心的な人ばかりということも気になりました。ここはどんな意味を込められたのですか? (2019年2月2日 20時) (レス) id: 93469ef5f7 (このIDを非表示/違反報告)
佐奈 - 題名に「終わる世界」とあるように、世界の終わりについてかかれたのですね。自分は枯れた月というのは世界の終わりが近づいたときの人々の様子と、主人公が月を見たときどんな風に見えていたのか、の二つを表しているのかなと思いました。 (2019年2月2日 20時) (レス) id: 93469ef5f7 (このIDを非表示/違反報告)
陰月。(プロフ) - ネコさん» コメントありがとうございます<m(__)m書いている私が言うのも変な話ですが、私自身が振り返る元となった話です。 (2018年12月29日 19時) (レス) id: 83a189451f (このIDを非表示/違反報告)
ネコ - すごく考える小説ですね!とても面白くて改めて自分を振り返る事が出来ました。頑張って下さいね。応援しています! (2018年12月27日 14時) (携帯から) (レス) id: 35b403556b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:陰月。 | 作成日時:2018年7月1日 17時

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