十年前 ページ1
まだその時、わたしは五歳だった。
保育園に通っていた。
あまり大きな保育園ではない、だから自然と団結力は強くなっていった。
家に帰れば、仕事帰りの父親が笑って、台所に立っていた。
もっとも、父は料理が得意なわけではなく、母に教えてもらっていた。
「みーちゃん、今日はどうだった?」
みーちゃん、というのはわたしのこと。
「うん、今日はタケルくんと、ヒロミちゃんと一緒に砂のお城をつくったの!」
「あらそうなの?よかったじゃない」
深月は友達いっぱいいるもんな、と父が笑っていた。
次の日のことだった。
突然、政府がこんなことを言い出したのだ。
『後、十年もしないうちに、この世界は終末を迎えます』
テレビから聞こえてくる音楽が、その時はノイズにしか聞こえなかった。
もちろん、何を言っていたのか、当時のわたしに理解できるはずがない。
ただ、父と母がいつもよりも緊張した顔をしていたから、何か良くない兆しがあったんだ、と
薄々ながら、感じ取っていた。
――その日からだった。
母が、いつもの優しさを失い、鬼のようになったのは。
父が、酒ばかり飲むようになり、時に暴れるようになったのは。
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陰月。(プロフ) - 佐奈さん» コメントありがとうございます。まず月についてですが、月は人々を見守っているものとしています。人々が自分勝手というのは、本来の自分の姿を、非日常に直面したらどうなるのか、勝手ながら推測して書かせていただきました。 (2019年2月17日 11時) (レス) id: 83a189451f (このIDを非表示/違反報告)
佐奈 - また、人々の様子は自分さえよければよい、という自己中心的な人ばかりということも気になりました。ここはどんな意味を込められたのですか? (2019年2月2日 20時) (レス) id: 93469ef5f7 (このIDを非表示/違反報告)
佐奈 - 題名に「終わる世界」とあるように、世界の終わりについてかかれたのですね。自分は枯れた月というのは世界の終わりが近づいたときの人々の様子と、主人公が月を見たときどんな風に見えていたのか、の二つを表しているのかなと思いました。 (2019年2月2日 20時) (レス) id: 93469ef5f7 (このIDを非表示/違反報告)
陰月。(プロフ) - ネコさん» コメントありがとうございます<m(__)m書いている私が言うのも変な話ですが、私自身が振り返る元となった話です。 (2018年12月29日 19時) (レス) id: 83a189451f (このIDを非表示/違反報告)
ネコ - すごく考える小説ですね!とても面白くて改めて自分を振り返る事が出来ました。頑張って下さいね。応援しています! (2018年12月27日 14時) (携帯から) (レス) id: 35b403556b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:陰月。 | 作成日時:2018年7月1日 17時