通じないから! ページ13
氷坂についていった先には、一つの建物があった。
IDEAを確認しながら何かを確認するように、わたしをその場に残して建物をぐるりと一周した。
アパートの一戸分はあるだろう。
氷坂は無言でわたしの腕をつかみ、その建物の中に入っていく。
せめて声一つでも出ればよかったのに、氷坂の大胆な行動に驚いたわたしの脳は一瞬停止していた。
普段は
めったなことでは表情を変えないし、他人の興味がないのか、いつも一人でいる。
だから当然、わたしは氷坂との接点は単なるクラスメートというだけで、
それ以上でもそれ以下でも無い存在だった。
氷坂に腕をつかまれたまま、私は建物の中を観察した。
外装はそこそこ古く見えたのに、中はずいぶん人の手が入っている。
誰かが定期的に掃除でもしているのだろうか。
相変わらず無表情の氷坂に、どういうことなのかと聞こうとした時だ。
「
「……!?」
目の前に知らない男が立っていた。
驚いて、今度は声にならない叫びになった。
「目的」
対象に、どこまでも冷淡な氷坂は相手にそれだけ言う。
「そう焦らないでよー、玲香ちゃんもいるんだし」
「あの、わたし貴方のこと知らないんですけど」
男はにやり、と笑って
「いや、会っているよ。一方的に」
一方的。
それでわたしは思い出した。
一グレード上の知らない人の手帳を拾った時のことを。
わたしの顔を見て
「やっと思い出してくれたあ」
と何故かうれしそうな顔をする男。
怖い、という感情よりも先に嫌悪感が込み上げた。
「ごめんごめん、僕の名前は荒波愼吾」
名乗ったからどうというわけでもないんだけど、と冷たい目で荒波を見る。
「とりあえず今日は顔合わせってとこ。氷坂クンがキミのクラスメートって聞いたから、彼に
ここまで連れてきてもらった。ここは僕の基地」
「は?」
言いたいことが全く分からない。別に顔合わせってする必要ないし。
「じゃーねー」
最後まで傍若無人な荒波を無言で見送り、氷坂を見る。
「ねぇ、どういうこと」
「僕は前に忠告した。でもササハラさんが危険」
これまで見たことがない、氷坂の真面目な顔にわたしは固まった。
「彼の顔を覚えておいて」
「忘れたら?」
「君が危ない」
それだけ言うと、氷坂はわたしを外に連れ出し、さっさと一人で歩いて行った。
は、ちょっと?
全っ然意味が分からないんだけど!
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陰月。(プロフ) - まりもさんだぞっ(*`・ω・´)さん» 今更コメントお返しすみません。そうですね、あまり表情についての描写がないので取り入れていこうと思います。アドバイスありがとうございます! (2018年11月4日 18時) (レス) id: 83a189451f (このIDを非表示/違反報告)
まりもさんだぞっ(*`・ω・´) - イベント参加有難うございます!、オリジナルとは思えないしっかりした設定がグットポイントです。あと私が思った事なのですが、表情も文に取り入れて見ては如何かがでしょうか?例えば、わざとらしい程に眉を垂れ下げた__とかですかね。投稿これからも頑張ってください! (2018年8月21日 4時) (レス) id: ec47b1a578 (このIDを非表示/違反報告)
陰月。(プロフ) - ファリスさん» コメントありがとうございます<m(__)m>アイデアはなかなか思い浮かばないので、かなり更新遅いですよ。文才も普通です(^^;土下座してまでお願いしないでいいですよ。誰もが個性を持っていれば、それは魅力的な作品ですから、ファリスさんも個性を持っていますよ。 (2018年8月7日 18時) (レス) id: 6b87a378ce (このIDを非表示/違反報告)
ファリス - 情報学がテーマの作品をはじめて読みました。オリジナルで書けるの凄いです!私にそのアイデアと個性、文才を分けてくださいお願いします( ノ;_ _)ノ (2018年8月5日 16時) (レス) id: 6040f0caed (このIDを非表示/違反報告)
陰月。(プロフ) - アレンさん» コメントありがとうございます。本当ですか?とても嬉しいです! (2018年7月22日 16時) (レス) id: 6b87a378ce (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:陰月。 | 作成日時:2018年4月21日 17時