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日坂は私の方をちらりと見て
「事実と真実。僕の自己解釈だから、違う部分も多くある。
事実は、客観的に見たもの。
例えば、今そこにあるもの。紅茶、ケーキ、後ろにあるマンガ。
それらを見て、普通思うのは、『紅茶とケーキとマンガがある』。
真実は、主観的な感覚。
目の前にある紅茶がさわやかな香りであり、ケーキの甘さはべたべたしていない。
それらは、基本的に自分が実際に接触してみてわかるもの」

教室にいる時とは違い、饒舌な日坂を目の前にして、私は驚いた。
暗い、無気力。そう言われるイメージとは全く想像もつかないからだ。

つまり、と日坂は続ける。
「桐原さんの感覚、結城さんの感覚は違う。無理に伝える必要はない。どうしても必要ならば、客観的な情報を伝えればいい」

話は入ってきているけれど、右から左へと抜けていく感覚がある。
それが顔に出たのか、
「実体験があれば説得力がある。そう言う解釈でいいと僕は思う」

そう言うなり、自分の文の紅茶を一気に飲み干し、席を立つ。
私も慌てて紅茶を飲み、日坂に続く。

席を立った日坂は、店員さんをちらりと見ただけで出ていった。
「え?」
私が驚いて棒立ちになっていると、さっきの店員さんが来て、
「気にしなくていい。あいつとはそう言う約束だ」
そして私の肩を軽く押し、早く行ってやれ、と笑っていた。


日坂は帰り道、
「小説を書く人の中で、どうしても書き分けが必要な部分がある筈だ」
と言うと、私を正面から見据える。
「今日の話は、第三者目線と当事者の目線を書き分ける時に思い出して」
それだけ言うと、無気力な――つまりいつもの空気をまとい、歩いていった。


家について、すぐに自分の部屋へと向かう。
目の前にあるのは、原稿用紙。
まだまだしっかりと書けないけれど、今思いついたことは書いておきたい。

小説を書いている時、両親が部屋に入って来そうになったら、
「今宿題やってる」
と言い訳のように言う。稀に宿題に作文があるから、全部が全部嘘って訳では無い。


日坂の言っていたことを思い出し、自分の感覚と他人の感覚の表現を変えた。
今思えば、藤崎さんの文が光って見えたのは、書き分けが出来ているってことでもあるんだ、と
私は解釈した。

七→←五



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うたは(プロフ) - 陰月。さん» わざわざ返信ありがとうございます。ううん、なんでしょう。私からすると多いなあという印象なのですが、陰月。さんが書いていて心地よいならこのままでも、と思います。指摘した身だというのに申し訳ございません。これからの御活躍お祈りしています。 (2019年2月17日 17時) (レス) id: 14b840c6a0 (このIDを非表示/違反報告)
陰月。(プロフ) - うたはさん» 今更の返信すみません。やはり開業が多い方が読みやすいでしょうか?少し多めにしてみます。わざわざありがとうございます。 (2019年2月17日 11時) (レス) id: 83a189451f (このIDを非表示/違反報告)
うたは(プロフ) - はじめまして。このお話好きです。が、すみません、文の途中での改行が些か読みづらく感じました。これからも応援してます。頑張ってください。 (2019年1月20日 23時) (レス) id: 87a0c9cf89 (このIDを非表示/違反報告)
陰月。(プロフ) - コノハ【心葉】さん» コメントありがとうございます<m(__)m>気づくのが遅くなってしまいすみません(-_-;)夢が小説家、とはっきりしていていいと思います。 (2018年12月29日 19時) (レス) id: 83a189451f (このIDを非表示/違反報告)
コノハ【心葉】 - 私の夢が小説家なので、なんか、元気付けられました。 (2018年11月14日 17時) (レス) id: bac5683ead (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:陰月。 | 作成日時:2018年3月22日 16時

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