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十八 ページ19

叔父さんとわたしの過去を思い返していると
「じゃあさ、作者の名前、桐原で調べたら出てくる?」
「出てくる……かなあ…………」
自信がない。

こう言っちゃ叔父さんには失礼だけど、なかなか売れないおじさんの本を調べるだけでも一苦労だ。
気になるというのはわかる。
実際、親戚であるくせにわたしは叔父さんがどんなものを書いているのか知らないのだ。
お父さんもお母さんも、叔父さんの書く小説が売れないという事と、小説家で成功する人たちは
星の数ほど作家がいる中でも一つまみという事を知っている。
知っているから、わたしには普通に会社の事務に進んでほしいと願っている。

お母さんが今、事務勤めをしていることは知っている。
けれどわたしは、あくまで作家の道に進みたい。
まだ中学一年生だけれど、進路のことで両親とはしょっちゅう揉めている。


「あ、出てきた」
「嘘!?」
ホントだって、と言いながらパソコンの画面を指さす藤崎さん。
学校のパソコン室は、放課後は自由に使っていいので、調べものと称してゲームをする人も結構いる。
わたしたちも、たまに使う。

「ほらこれ『偽物と本物の違い』っていうの、そうでしょ?」
概要欄などを見て、わたしは頷いた。

一言一句、叔父さんが言っていたこととまるきり同じ文が、小説の説明概要欄に書かれていた。
……これ、わたしは読んでみたい。
「ねぇ、確かこれ、図書室にもあるよ」
「嘘!?」
今日二回目の驚きを隠さずに言う。
「じゃあ行こうか、図書室」

藤崎さんとさくらが盛り上がっているのを見て、わたしもうなずいた。



放課後の図書室は静かだ。
昼休みは男子の遊び場、放課後はわたしたちが主に使う。
受験生である三年生や勉強したい人用に自習スペースが設けられているので、図書室で自主勉をする人はまずいない。
「ねぇ、どこにあるの?」
「ここ!」
藤崎さんが指さすところには、確かにあの本があった。
多分これは、叔父さんの葛藤が書かれている。
どうしてだろう。見た瞬間に直感的に思った。これは読まなければ、と思ったのだ。

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うたは(プロフ) - 陰月。さん» わざわざ返信ありがとうございます。ううん、なんでしょう。私からすると多いなあという印象なのですが、陰月。さんが書いていて心地よいならこのままでも、と思います。指摘した身だというのに申し訳ございません。これからの御活躍お祈りしています。 (2019年2月17日 17時) (レス) id: 14b840c6a0 (このIDを非表示/違反報告)
陰月。(プロフ) - うたはさん» 今更の返信すみません。やはり開業が多い方が読みやすいでしょうか?少し多めにしてみます。わざわざありがとうございます。 (2019年2月17日 11時) (レス) id: 83a189451f (このIDを非表示/違反報告)
うたは(プロフ) - はじめまして。このお話好きです。が、すみません、文の途中での改行が些か読みづらく感じました。これからも応援してます。頑張ってください。 (2019年1月20日 23時) (レス) id: 87a0c9cf89 (このIDを非表示/違反報告)
陰月。(プロフ) - コノハ【心葉】さん» コメントありがとうございます<m(__)m>気づくのが遅くなってしまいすみません(-_-;)夢が小説家、とはっきりしていていいと思います。 (2018年12月29日 19時) (レス) id: 83a189451f (このIDを非表示/違反報告)
コノハ【心葉】 - 私の夢が小説家なので、なんか、元気付けられました。 (2018年11月14日 17時) (レス) id: bac5683ead (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:陰月。 | 作成日時:2018年3月22日 16時

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