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小山side
｢ここか…｣
俺たちは早朝から家を出発して、群馬にやってきた。
というのもシゲたちが来た日の夜、
｢鳩ちゃん今日どんな話したの？｣
｢へへ、ひみつ。
ねえあのさ、ここに行きたいんだけど…｣
鳩ちゃんが持ってきたのは2枚のチケット。
｢美術館？｣
｢うん、佐藤さんから貰ったんだ。
色覚異常になってからあまり絵は見ないようにしてたんだけど、モネの絵が昔から大好きで…
ちゃんと見れるか自信ないけど｣
シゲが間接的にプレゼントを渡したとは言っていたが、この事だったのかと驚く。
もうひとつ驚いたのは、この開催期間の中に俺の休日がしっかり入っていること。つくづく天才だと思った。
｢もちろん。俺も睡蓮、見てみたかったんだよね｣
と言った感じでここにやってきたのだ。車内である程度変装をすると、鳩ちゃんも念の為マスクを付けた。
｢大丈夫？｣
｢うん、緊張するけど…｣
｢ゆっくり行こう｣
俺たちは入口で受付を済ませ中に入った。鳩ちゃんの言っていた絵はフロアの最後にあるようだった。
一歩踏み入れると、無数の絵画が並んでいた。
鳩ちゃんについて行くように歩いていると、一枚の絵の前で鳩ちゃんはピタリと歩くのを止めた。
｢どうしたの？｣
｢これ、何の絵…？｣
｢これは…綺麗な夕暮れの絵だね｣
と、『夕暮れのサン・ジョルジョ・マッジョーレ島』と書かれた文字を指す。
｢そっか…私には全部茶色に見えるよ。もうしばらく夕焼けなんて見てないなあ｣
不覚にも悲しい顔をしている鳩ちゃんを、橙色の夕暮れは暖かく照らしている様に見えた。
その後順調に足を進めていくけど、鳩ちゃんは俺に話しかけることは無かった。
｢鳩ちゃん、次が睡蓮だよ｣
｢もう、最後なんだね｣
だんだん人通りが少なくなり、すれ違うことがあまり無くなった。
そしてその｢目的｣を見つけた時、
俺と鳩ちゃんはその大きな絵に釘付けになった。
豪華な額縁に纏われたその絵は、詳しくない俺でさえも虜になるほどの迫力を持っていた。
鳩ちゃんは絵の中心に立ち、無意識に手を胸に当てた。
｢すい、れん…｣
｢綺麗だね｣
｢青くて、きれい…うっ…｣
涙目の鳩ちゃんは持っていたハンカチで顔を覆った。
｢前に見た時とは違うけど、関係ないみたい…
慶ちゃん。私、絵が描きたいっ。描かなきゃだめだ｣
2人しかいないその空間で、鳩ちゃんはしばらくその絵を見て離さなかった。
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紫翠(プロフ) - momoさん» 第1章の頃から読んでいただき、本当にありがとうございました！momoさんのコメントにいつも励まされていたのて、最後まで楽しんで頂けたことが嬉しいです。私も寂しいですが(笑)、また次回作も読んで頂けたら嬉しいです。 (2021年9月24日 1時) (
レス) id: ea39d4d25c (このIDを非表示/違反報告)
momo(プロフ) - 完結おめでとうございます！ずっと更新されていくのが嬉しくて、毎朝確認してましたwそんなに大好きなお話が完結して、うれしいのと同時に、さみしくもあります。鳩ちゃんが色を取り戻せて良かったですし、鳩ちゃんの好きな事ができて幸せに感じます。また読み返します (2021年9月23日 13時) (レス) id: a0b82fa00b (このIDを非表示/違反報告)
紫翠(プロフ) - にゅすの さくらさん» コメントありがとうございます！1章から読んでくださっていたんですね。本当に嬉しいです！その場面は私も書いててかすかに感動していました(笑) これからも楽しんでいただけるようなお話書きますのでこれからもお付き合い下さい〜！ (2021年9月22日 12時) (レス) id: ea39d4d25c (このIDを非表示/違反報告)
にゅすの さくら(プロフ) - 完結おめでとうございます！思い出の本屋さんからずっと読んでました。すきないろで鳩ちゃんが色を取り戻した時は思わず感動で泣いてしまいました(笑)。紫翠さんの作品の世界観が大好きなので次回作も楽しみにしています！ (2021年9月22日 7時) (レス) @page50 id: 35346644c4 (このIDを非表示/違反報告)
紫翠(プロフ) - りんごさん» ありがたいお言葉ありがとうございます！！ご期待に添えるよう頑張っていきますのでこれからもよろしくお願いします！ (2021年8月10日 23時) (レス) id: ea39d4d25c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：紫翠 | 作成日時：2021年8月1日 1時
